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特集

地域産業実態調査にみる
団塊世代市場に向けた中小企業の新たな取組み

団塊世代のニーズと団塊ビジネス例

団塊世代市場の捉え方

(2)団塊世代を働き手としたビジネス例

広義には団塊世代を商品・サービスの対象とし、かつ働き手とするものも考えられるので、併せて事業例を紹介する。

例1.中国人や韓国人向けの観光ガイド

富士山静岡空港の開港により、中国や韓国からの観光客が、多く流入することが見込まれる。こうした観光客に対して、県内の観光スポットを熟知した、団塊世代が観光ガイドを務める。経験を生かしたい、地域に貢献したい、という団塊世代のニーズにもマッチし、併せて、団塊世代向けの中
国語や韓国語の旅行会話教室の開講なども考えられる。

例2.団塊世代によるプランニング会社

団塊世代が必要とする商品やサービスを企画するプランニング会社を企業組合などの形態で設立する。

団塊世代が企画することで、より実効的なプランに仕上がるというメリットがある。併せて、会社(企業組合)内に、これら企画を実行に移す、実働部隊を設置することで、働き手としての団塊世代のシーズ創出にもつながる。

その他の例

廃校となった学校を利用し、団塊世代が農業体験をする。収穫時には、収穫祭を行い、自分たちが作った農産物を調理し、地元住民にふるまうなど、地域との結びつき強化にも貢献できる。

中小企業と組合組織などの連携のあり方

  1. 地域内の連携組織を生かして、団塊世代を働き手として活用する
    住民の困りごとなど地域内のニーズを、団塊世代を働き手として解決していくには、同一地域内の連携組織の活動が有効である。
    東京都品川区の中延商店街では、商店街振興組合がNPO法人を立ち上げ、団塊世代などの困りごと(ニーズ)を、団塊世代を中心とする有償コンシェルジェ(シーズ)が解決する「街のコンシェルジェ」事業を実施。
    足立区の東和銀座商店街では、株式会社をつくり、高齢者への弁当宅配事業を行うなど、各地の商店街組織で地域の活性化につなげる事業を展開している。
    自らの住む地域のニーズを発掘し自ら働き手となってサービスを提供することができるのも、組合員の多くが団塊世代であり、また商店街自体が地域に根付いた活動を本分としていたからこそと言える。
  2. 企業組合など組合組織を活用し、団塊世代を働き手として取り込む
    定年後もこれまでの仕事の知識や経験を生かしていきたい、というニーズを持つ団塊世代は少なくないが、再就職や企業の設立となると、仕事が最優先ということになりがちとなる。
    その点、1人親方の集まりといった形態の企業組合は、株式会社などとは異なり、「多種多様な価値観(スタイル)の人を取り込むことができる」、「ノルマや時間に縛られない」、「各組合員に明確なオブリゲーション(義務)が発生しない」などのメリットがあり、また企業を設立する場合に比べて、企業経営に係る煩雑な事務負担なども少なくて済む。
    東京のシニア旅行企業組合では、旅行会社の退職者に企業組合への加入を促し、組合員が得意とする営業や添乗員業務に自分のペースで従事する、といった例がみられる。企業組合は、まさに団塊世代のライフスタイルにフィットした組織体であるといえよう(図表11.)。

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