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特集

地域産業実態調査にみる
団塊世代市場に向けた中小企業の新たな取組み

団塊世代のニーズと団塊ビジネス例

アンケート等からみた団塊世代のニーズ

以上のアンケート調査等を基に、団塊世代のニーズをまとめると以下の3点となる。

第1は、これまでに培った「知識・経験を生かしたい」という点である。

アンケート調査では、“身体が続くうちは働きたい”、“これまで蓄積してきたさまざまな知識や経験等を幅広く活用していきたい”との意向が強く表れている。この背景には、体力的には現役世代とほとんど変わらないという意識に加え、年金受給まで4〜5年ある、などがあると思われる。

第2は、「夫婦のきずなや仲間づくり」を重視している点である。

“友人・知人とのネットワークを生かしたい”、“夫婦で趣味を楽しみたい”との回答が多く、自由意見にも、“友人をたくさん作りたい”、“仲間づくりの場や地域貢献活動の場が欲しい”などの意見が多数みられた。

第3は、「楽しく年をとる」ことである。

アンケートでは、“1人で持つ趣味以外に、配偶者や旧友など気のおけない人と趣味を楽しみたい”、“自分自身にお金を投資する”などの傾向が示されていた。

また、大切にしたいことに“健康”を挙げる人が極めて多い。これらから、夫婦や仲間とともに、生きがいを感じながら、残りの人生を楽しく健康に過ごしたいと感じていることが表れている。

団塊世代市場の捉え方

以上のニーズから、団塊世代市場をどう捉えるかを考えてみたい。

たとえば、「知識・経験を生かしたい」と、「夫婦のきずな・仲間づくり」というニーズを重ねると(図表9.のAの部分)、「仲間と一緒に、知識や経験を生かし、地域に貢献したい」、「困っている人に手を差し伸べたい」などのニーズにつながる。また、「夫婦のきずな・仲間づくり」と「楽しく年をとる」(図表9.のBの部分)では「夫婦で共通の趣味を楽しみたい」、「楽しく年をとる」と「知識や経験を生かしたい」からは(図表9.のCの部分)、「知識や経験を生かして、充実した余生を送りたい」が浮かぶ。

こうした点から団塊世代市場を考えると、1.団塊世代を商品やサービスの対象として捉える2.団塊世代を働き手として捉える、という2つの見方ができる。

図表9. 団塊世代のニーズと市場

(1)団塊世代市場に向けたビジネス例

人口のボリュームを持ち、他の世代と比べアクティブとされる団塊世代に対して、どのようなビジネスが考えられるだろうか。

団塊世代のニーズや静岡県の地域資源、今後の社会経済環境の変化などを踏まえた事業例をいくつか挙げてみたい。

例1.空港就航先の移住体験のワンストップサービス

富士山静岡空港の就航先である、北海道、や石川、福岡、熊本、鹿児島、沖縄などの団塊世代をターゲットとし、静岡県への移住体験、定住を促す。また、移住・定住促進事業に派生する不動産、ホテル、観光、家具、運送など、多業種が連携し、ワンストップサービスを提供する。さらに、いつ でも帰ることが可能で、気軽に参加してもらえるため、交流人口の増加にもつながる。

例2.会員制の体験型観光旅行

対象を団塊世代前後に限定した会員制のパックツアーを企画。会員には月刊誌などで、ツアーの企画内容を紹介する。ツアーには、団塊世代が好む“こだわり”や“うんちく”を取り入れ、「どこに行くか」だけでなく、「そこで何をするのか」を明瞭にし、ネーミングも、学習意欲をそそる「大人の修学旅行」や過去の思い出に回帰させる「追憶旅行」など、インパクトかつ目的が分かりやすいものとする。

その他

団塊世代向けの企画やイベントを行う機関に、核となる人物(キーマン)を置き、団塊世代との意見交換を定期的に実施。団塊世代が求める商品やサービスを研究する。

中小企業と組合組織などの連携のあり方

団塊世代のニーズをビジネスチャンスとして生かす上で、いかにニーズを的確に捉えるかが重要となる。

たとえば、移住ニーズを持つ団塊世代を、実際に移住にまで結びつける場合、遠方に住むため顕在化されていないニーズをどう把握するか、移住先に対する細かな要望をどう把握し応えていくかなどは容易ではない。こうした場合に、一企業や一自治体だけで取り組むのではなく、関連する企業と自治体、または企業同士、自治体同士が連携し、情報発信力・収集力などを高めていくことが、極めて有効となる(図表10.)。

図表10. 行政と民間の連携などにより、団塊世代のニーズを取り込む

(拡大図を見る)