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特集

地域産業実態調査にみる
団塊世代市場に向けた中小企業の新たな取組み

団塊世代のニーズと団塊ビジネス例

団塊世代を商品やサービスの対象とするビジネス

大人の体験学校「トゥモローカレッジ」

教育プログラムの開発を手がける「トゥモローカレッジ」では、団塊世代を対象に個性的な英会話の授業を行っている。

例えば、“英語を使ったジャズライブ”は、徳川慶喜の屋敷跡に併設されたライブハウスでジャズを楽しみながら、外国人歌手と会話をしたり、英語の歌詞を聴いたりして、本場の感覚を日本で味わうことができる。そのほかにも、“英語で学ぶ絵画講座”、“旅英語”など、楽しみながら身につく企画が多数行われている。

英会話の他にも、退職後の年金や貯蓄、不動産などの活用方法を解説し、余裕のある人生設計の策定を後押しする、“資産ノウハウ講座”も開催する。

さらに、プロのゴルフ選手と、コースを回りながら指導を受けられる“健康ゴルフレッスン”や旅行企画会社「海外体験のすすめ」と提携し、オーストラリア旅行を企画するなど、セカンドライフをより深く楽しんでもらうための、独創的なカリキュラムを提供している。

暖快(だんかい)倶楽部

静岡市市民生活課では、市役所内に「暖快倶楽部」を設け、団塊世代を中心に、セカンドライフを生き生きと過ごしてもらうための様々な取組みを行っている。

「団塊の本音トーク」(講演会)では、毎回、団塊層のゲストを招き、その仕事観や人生観、遊び観などを通じて時代や社会現象を考察。シティFM静岡で毎週月曜日に放送している「団塊痛快ラジオ放送局」では、県内在住者をゲストに招き、団塊世代を中心とするリスナーに、生き方や気づきのヒントを提供している。

また、Webサイト「十人十色」は、事務局からの一方的な情報だけではなく、団塊世代をはじめとした多くの人にとっての双方向の情報ステーションとして機能。同じくWebを利用した「SNS痛快コミュニティ」とリンクし、情報を待つだけではなく、個々人が自ら表現し、発信することで、交流が豊かになる仕掛け作りがなされている。

歌声喫茶・野菜塾

静岡朝日テレビカルチャーでは、団塊世代向けに様々なカルチャー講座を開催している。

中でも人気のあるものの1つが「歌声喫茶」。団塊世代にとって青春時代を想起させるロシア民謡やカンツォーネ、懐かしの歌謡曲など、およそ30年前の歌を生伴奏で、同世代の仲間と肩を組み、大きな声で歌うことによって得られる熱気と一体感が受けている。

「野菜塾」では、はじめて有機野菜づくりに挑戦する人を対象に、全国的に有名な農場経営者が直接、畑で受講者に対して指導する。野菜を育てる楽しさと、美味しく食べる楽しみを学びながら体験できる。

また、地域の生産者やエコツーリズムコーディネーターをゲストに招き、農業の可能性を探るなど、農業や自然に高い関心をもつ団塊世代からの評判は高い。

団塊世代を働き手とするビジネス

ラバーズ・キッチン

「ラバーズ・キッチン」は、団塊世代女性の2グループ(「ネクステージ」、「さらだぼーる」)が企画する、28歳以上の独身男女を対象としたイベントである。「家庭料理を作りながら運命の人を見つけます」と銘打ち、スタッフの人脈を通じて申し込まれた独身の男女が、いっしょに料理を作りながら相手の人柄などを観察し、結婚相手を探していくという仕掛けだ。

料理を作るという、きわめて日常的な行動をともに行うことで、互いのことを早く理解できるという、経験を積んだ団塊世代ならではの斬新な発想がきっかけ。イベントでは、結婚暦30年以上の女性
スタッフが、人生の先輩としてアドバイスを与え、時には、会話に加われない男性を、うまく会話に引き込むこともあるという。

イベント企画の背景には、昨今の晩婚化、未婚率の上昇を憂うとともに「結婚して子供を産み育てることは、人として成長できる」という考えがあり、若い世代を何とかしたいという団塊世代の気概が感じられる。

静岡市の「B級グルメ」のアピール

首都圏から見る静岡市は、「何でもあると言われるが、何があるのか分からない」といったイメージで捉えられ、インパクトが弱い都市とされているようである。

静岡観光コンベンション協会では、2008年に首都圏のメディア関係者約50人を対象に、観光プレゼンテーションを東京で開催し、静岡市の魅力を売り込んだ。

「何でもよいから静岡市の印象を持ち帰ってもらおう」というコンセプトのもと、団塊世代を中心とする静岡県民が、静岡おでんやもつカレー、黒はんぺんフライなど静岡の「B級グルメ」を紹介。認知度の向上に努めた。

この仕掛けにより、静岡市の食の面での懐の深さをPRするとともに、自然や歴史などの観光資源もアピール。観光地としての静岡を強く印象付けることに成功した。

隣人祭り

「隣人祭り」とは、同じ地域の住民が食べ物や飲み物を持ち合って語り合うパーティー。1999年にフランスで起きた高齢者の孤独死をきっかけに、「近所のきずなを深めよう」と始まった活動である。その後、高齢者の孤独や近隣に対する無関心などの世相を背景に、ヨーロッパから世界各地に伝播し、現在では30カ国近くに広がっている。

日本では、2008年5月に新宿で初めて開催。地域の住民や商店街の店主らがテーブルを囲み、身近な話題から地域の活性化、環境問題に至るまで多くの話題について自由に語り合った。

静岡県では、清水駅前銀座商店街振興組合とまちづくり考房SHIMIZUが企画し、昨年8月に初めて開催され商店街の店主や近隣住民ら約50人が参加。アルコールやつまみなどを持ち寄り、様々な話題で盛り上がった。11月には、同地で第2回目が行われ、今後も県内各地で開催が予定されるなど、新たな人の輪づくりの場として注目を浴びている。