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特集

県内中小企業の工場用地ニーズと立地促進を考える

深刻化する不況の中でも製造業を中心に、さらなる生産の拡大や集約化、環境問題への対応を図るための移転先として工場用地を求めたいというニーズは、少なくない。また、既存の工業団地では、組合員の倒産や撤退などから空区画が生じているところも見受けられる。

一方、県や各市町による行政主導型の工業団地造成が進められているものの、工場用地を求める企業のニーズと分譲可能な用地の情報が一元的に管理されておらず、マッチングの機会が得られていないのが実情だ。

そこで本会では昨年度、県内中小企業の工場用地ニーズと行政の工業立地促進に対するスタンスなどを調査。企業のニーズと工業用地に関する情報を集積・発信するためのシステムづくりについて方向性をまとめた。特集では、その概要を紹介する。

調査の概要

県内の中小製造業者1028社及び県内39市町(23市16町)の企業立地担当部門を対象に、平成20年11月10日から28日にかけ、アンケート票による留め置き法により実施。

回収数は企業が257社(回収率25.0%)、行政は28市町から回答を得た(回収率71.8%)。

行政の工業用地の状況や情報について

現状と支援策

11市町が既に工業用地をもち、うち4市町が5ヵ所以上を有すると回答した。また現在は有していないが、募集中や今後計画との回答も3割ずつあり、多くの市町が用地開発に積極的に取り組んでいることが分かる(図表1.)。

現在、募集中の区画数は、5区画以上との回答がもっとも多く、2区画、3区画がこれに続く。

図表1. 工業用地の状況(複数回答)

工業用地の状況

企業誘致に関する支援については、7割を超える20市町が支援策を用意していると回答。最も多い支援策は、用地取得資金の補助で9割が実施。雇用促進関係も6割に上っている(図表2.)。

図表2. 支援策の内容(複数回答)

支援策の内容

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支援策を受けるための条件は、新規雇用人数(85.0%)、用地取得から移転までの期間(65.0%)が多く、支援対象を当該市町内の企業に限定しているところも35.0%あった(図表3.)。

図表3. 支援策を受けるための条件(複数回答)

支援策を受けるための条件

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情報の提供と把握

情報提供の方法は、「ホームページの利用」が3分の1程度(32.1%)であるのに対し、「電話対応」(53.6%)や「窓口問い合わせ対応」(46.4%)などの受動的な情報提供が多い。特に行っていないとの回答も3分の1強(35.7%)あり、情報発信力の強化が課題といえる。

提供する情報の内容は、支援策(77.8%)以外では、物件の詳細(83.3%)、広さ(77.8%)、販売価格(55.6%)など文字、数値で説明可能な情報が主体となっている(図表4.)。

図表4. どのような情報を提供しているか(複数回答)

どのような情報を提供しているか

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需要情報については、7割以上の市町が「把握したい」との意向を示し、「方法があれば活用したい」とあわせると九割を超えるなど、企業の需要情報に対する興味は高い。把握したい情報には、「進出を希望する企業の概要」(92.3%)、「希望面積」(88.5%)などの基本情報を挙げる自治体が多数を占めた。

今後の情報提供については、「効果的な方法を取り入れていく」との回答(13市町)に、「現在実施している方法の継続」を加えた情報提供に前向きな自治体は20市町(71.4%)である(図表5.)。

図表5. 今後の情報提供について

今後の情報提供について

工業用地の課題と展望

市町により概ね次の対応姿勢が見られる。

  1. 工業用地の開発が可能で、かつ積極的に開発する意向があり、情報収集にも前向きな市町。
  2. 積極的ではないが、機会があれば誘致を行っていく意向のある市町。
  3. 工業用地の開発はしたいが、適切な用地を有しない市町。
  4. 現状では動きの無い市町。

今回の調査では、大半の市町が1.の積極派となっている。

工業用地の開発によって企業を誘致することを基本とする市町が大半であり、区画の販売や企業の誘致に積極的な意思は示しながらも、実際に積極的に取り組んでいるところは限られている。

そのため、情報の受発信にも効果を欠いているのが現状と思われる。公共的で、情報管理等に信頼できる外部情報のシステムが、低コストで活用できれば有用であろう。