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トピックス

企業活動を継続するために
新型インフルエンザ対策の「事業継続計画(BCP)」策定のすすめ

現在、世界的な規模で流行している新型インフルエンザA(H1N1)。我が国でも死亡者数が20人を超え、この秋冬における更なる流行も懸念されている。

新型インフルエンザの流行は、企業の事業活動にも大きな影響を及ぼしかねない。

トピックスでは、新型インフルエンザ対策として企業がとるべき「事業継続計画(BCP)」の策定のポイントについてまとめた。感染の予防とともに、発生した場合における事業への影響や有事の際の対応についてご参考頂きたい。

新型インフルエンザへの対応について

1.新型インフルエンザの概要

新型インフルエンザA(H1N1)とは、従来、豚が感染していた豚インフルエンザウイルスが、「人から人」へと感染できるものに変異したもの。新型インフルエンザには、季節性インフルエンザとの類似点、相違点があるため、特徴を理解したうえで、対応することが重要となる。

新型インフルエンザの特徴

季節性インフルエンザと類似する点

  • 感染すると発熱、咳、頭痛、倦怠感などの症状がでる
  • 感染者の多くは入院の必要なく回復する
  • 基礎疾患(糖尿病、ぜん息など)を持っている人や妊娠中の感染者が重症化することが多い
  • 潜伏期間が1〜7日程度である
  • 抗インフルエンザウイルス薬(タミフル、リレンザ)の治療が有効である

季節性インフルエンザと異なる点

  • 基本的に免疫を持っている人がいない
  • 若い人がかかることが多い
  • 既存のワクチンがない

2.企業の対応

国の対応などを的確につかみ、新型イン フルエンザの流行に対し『どのように従業員を感染から守るのか』や『従業員にどのような配慮が必要なのか』を検討しておく。

1.最新の情報の入手

国の取組みや流行状況、医療などに関する正確な情報を、国や自治体のホームページなどから入手し、従業員に周知しておく。

2.職場や従業員における対応

職場における感染防止策

自社で感染の危険性が高い場所や事業などを明確にし、適切な感染防止策を施す。

<対策の例>

  • 手洗いの徹底
    職場の入口に手洗い場所を設置したり、速乾性の消毒用アルコール製剤を設置するなど、従業員の手洗いや手指の消毒を徹底する。
  • 健康管理の呼びかけ
    従業員に対して、十分な栄養をとることや十分な睡眠をとること、無理な出社はしないことなどの健康管理を呼びかける。
  • 感染した場合の職場への連絡の徹底
    従業員に対して、新型インフルエンザに感染したときはすぐに職場へ連絡することを徹底させる。
  • 通勤方法変更の検討
    流行時には、満員の電車やバスによる通勤を避け、時差出勤、自家用車や自転車による出勤の導入などを検討する。
  • 職場の清掃や消毒の実施
    職場の中で、従業員や来訪者など、多くの人が触れる場所は、こまめな清掃・消毒を実施することで、付着したウイルスを除去することができる。
  • 感染が判明した時の対応の周知
    感染が判明した場合は、職場に来ないよう従業員に呼びかける。

集客施設の利用者への感染防止策

集客施設の利用者間で感染が拡大しないよう 1.発熱症状のある方などの利用はご遠慮いただく 2.利用客が多くない場合は利用客間の席を離す 3.利用客が施設内で発症した場合に備えるなどの対策を検討する。

保育施設などが休業となった場合の配慮

育児や介護のために休まざるを得なくなった従業員に対して、休暇取得や短時間勤務、在宅勤務などを認めることを検討する。

基礎疾患(糖尿病、ぜん息など)がある従業員への配慮

基礎疾患を有する人の重症化や死亡も増えているため、基礎疾患のある従業員を把握し、感染防止策を徹底する。

濃厚接触者への対応

感染者と濃厚接触した従業員への対応は、保健所からの指示(外出自粛など)に従う。

従業員個人や従業員の家庭での感染防止策

職場での感染防止策の実施に加え、従業員個人や家庭においても、感染防止策を確実に行うことが重要だ。

感染防止策としては、1.咳やくしゃみの際は、ティッシュなどで口と鼻を押さえ、他人から顔をそむける咳エチケットを行う。また、不織布製マスクの着用により他人への感染を防ぐことができる 2.外出からの帰宅後の手洗い・うがい。手洗いは流水と石鹸を使い、15秒以上行うと効果的だ 3. 感染者から適切な距離(2メートル以上)を保つことで、飛沫感染対策となり、感染の危険性を大幅に下げることが可能となる 4.感染者と対面する時や人込みに入る時にはマスク着用を心がける等があげられる。

この感染防止策は、季節性インフルエン ザ対策としても、有効である。日ごろから習慣づけておきたい。

3.将来への備え

今回の新型インフルエンザの毒性は、季節性インフルエンザと同程度で、強毒性の場合のような深刻な健康被害は発生していない。しかし、過去に大流行した新型インフルエンザ(スペインかぜ)では、第1波より第2波の方が被害が甚大であった。将来への備えを怠らないことが重要である。

3.新型インフルエンザによる事業リスク

感染拡大により『事業にどのような影響が生ずるか?』を検討しておく必要がある。

どのような影響を想定すべきか…

  • 感染拡大期では、多くの従業員が出勤困難となる可能性がある。ヒト、モノ、カネ、情報などの経営資源のうち、特に「人」の確保に支障が生ずる可能性が高い。
  • 自然災害とは異なり、電気、水道、ガス、通信などのインフラには大きな問題は生じないものと予想される。
  • 広域での感染拡大により、部品や材料などの確保が困難となる場合も考えられる。
  • 世界的規模での感染拡大も予想されるため、国内だけでなく海外事業所での対策(海外事業の継続方針や日本人従業員の帰国・滞留など)も検討しておく。