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特集

中小企業におけるコンプライアンスの確立と支援

“コンプライアンス”とは、コーポレートガバナンス(企業統治)の基本原理の1つで、法律や規則に従って企業活動を行う「法令遵守」を意味する(さらに、法令とは別に社会的規範や企業倫理(モラル)を守ることもコンプライアンスに含まれる場合もある)。

近年、次々に発覚するマンションの耐震強度や食品表示の偽装、自動車メーカーのリコール隠し、さらには食べ残し料理の使い回し、事故米の不正転売などは、長きにわたってコンプライアンスが欠如した経営を続けたことに起因することが多い。

特集では、本会が昨年度の構造改革支援ビジョン策定事業を通じ取り組んだ、中小企業のコンプライアンスの確立と支援策について、報告書を基にその概要を紹介する。

組合員企業のコンプライアンス経営に対する支援の実態調査

本会では、会員組合のコンプライアンスに対する認識の度合いや組合員企業のコンプライアンスへの支援の有無、支援内容などを明らかにするため、アンケート調査を行った。

対象は、会員組合から抽出した271組合で、平成20年11月から12月にかけ、郵送により調査。123組合(有効回答率45.4%)から回答を得た。

回答組合の属性

回答組合の組合員企業数の内訳は、「15社以下」が45組合(36.6%)、「16社〜30社」が27組合(21.9%)と、30社以の組合が約6割を占めた。一方、「60社以上」の組合も29組合(23.6%)あり、組合によって大きなバラツキがみられる。

業種では、「一般機械・輸送機械他」(28組合・22.8%)や「食料品」(21組合・17.1%)などの製造業関係が71組合(57.7%)。一方、「建設業」(23組合・18.7%)、「サービス業」(17組合・13.8%)などの非製造業関係は、51組合(41.5%)となった。

組合の専従職員数は、「2人」が31組合(25.2%)で最も多い。「0人」も14組合(11.4%)と1割を超えるなど、職員3人以下が69.1%(85組合)を占めた。

コンプライアンスに対する基本的な認識

組合員企業がコンプライアンスに取り組む目的として、特に重視すべきことは、「社会的な非難を受けたり業務停止になるような、法令違反をしない」(64.2%)、「社会的な非難を受けたり業務停止になるような、倫理的に不適切な行動をしない」(52.8%)などを多くの組合で挙げており、コンプライアンスの基本に忠実であるべきだと考えている組合が多い。

さらに、「法令遵守・企業倫理に加えて、環境保全に取り組むことにより社会的使命を達成する」(42.3%)や「法令遵守・企業倫理に加えて、社会貢献活動を行うことにより社会的使命を達成する」(38.2%)など広義のコンプライアンス活動を求める組合も多い(図表1.)。

図表1. コンプライアンスに取り組む目的として、特に重視すべきこと(複数回答)

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回答組合のうち食料品関連の組合では、「消費者からの信頼を向上させ、経営の安定・発展をはかる」(47.6%)や「全社的に消費者重視の意識を徹底させる」(33.3%)の割合が平均より高いことから、他業種に比べて、特に消費者を強く意識してコンプライアンスに取り組むべきだと考えていることがわかる。

会社が法令違反や不祥事を起こす主な原因については、「コンプライアンスに関する、経営者・経営幹部の意識や倫理観が欠如しているため」と考える組合が圧倒的に多く(71.5%)、経営トップの姿勢に大きく影響されると認識しているようだ。

ただし、これに次いで回答割合が多かった原因に「経営環境が非常に厳しいため(売上不振、赤字体質など)」(32.5%)や「取引先からの厳しい取引条件に対応するため(コスト削減、納期など)」(28.5%)などがあり、企業の厳しい経営状況がコンプライアンス上の問題を発生させていると認識している組合も3割程度みられた(図表2.)。

図表2. 一般的に、会社が法令違反や不祥事を起こす主な原因(3つまで)

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組合員企業のコンプライアンスに対する具体的な取組み状況と今後の方針や課題

組合員企業が実施していると思われるコンプライアンスに関する活動は、「従業員に対する、コンプライアンスに関する情報の提供」(22.0%)を約2割の組合が挙げたのに止まり、他の多くの項目の回答割合は1割に満たない結果となった。

一方、「とくにコンプライアンスに関する活動はしていないと思う」とする組合も半数にのぼり(50.4%)、多くの組合では、組合員企業がコンプライアンスに関する活動を行っていないと認識している。

今後、組合員企業が取り組むべきコンプライアンスに関する活動は、「コンプライアンス基本方針の作成」(39.8%)や「コンプライアンス基本方針の従業員への配布および周知徹底」(37.4%)の割合が高く、まずは基本的なルールづくと従業員への徹底が重要と考えている組合が多い。

食料品関連組合では「基本方針の従業員への配布・徹底」(52.4%)が組合全体の回答率より高くなっている(図表3.)。

図表3. 今後、組合員企業が取り組むべきコンプライアンスに関する活動(3つまで)

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