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視点・指導員の現場から

授産施設の経営改善への取り組み

授産施設へのアドバイス

昨年度、授産施設の経営診断に立ち会う機会を得ることができた。診断の目的は、その施設が持つ生産加工事業等の収益性の向上や施設利用者への支払加工賃の増加に寄与することを目的
にしたものであった。

障害者自立支援法とは

診断のきっかけは、「障害者自立支援法」(平成17年)の導入で、施設を取り巻く環境が大きく変化したことにある。

当支援法は、「障害者等が自立した日常生活又は社会生活を営むこと」、「障害者に費用の原則1割負担を求め、障害者の福祉サービスの一元化(身体・知的・精神障害者対策)を更に明確にする」と共に、「保護から自立」に向けた支援内容を明確にした法律である。

授産施設は、障害を持つ方々が社会復帰や参加ができるよう、就労を目的とした訓練を行う施設だが、支援法制定により、働くことで得る工賃水準を向上させる取組みが強く求められるようになった。

全国には、定員20名以上の授産施設が約3,500施設、定員19名以下の小規模通所授産施設が約1,000施設存在するといわれている。静岡県では、約4,000人が施設を利用しており、障害のある人たちは、作業所職員の支援を受けながら、企業の下請業務に取り組んだり、パン、クッキーの製造、陶芸、縫製品などの自主製品を作って販売することで収入を得ている。

昨秋に始まった世界的な同時不況が自動車業界等、多くの企業に大きなダメージを今も与えている。そんな中、授産施設でも、自動車関連企業の下請作業の契約を打ち切られた施設もでるなど、厳しい状況にある。

こうした不況下で下請業務や自主製品の生産拡大、工賃向上に寄与するには、どのような取組みが必要なのか、経営資源(ヒト・モノ・カネ・ノウハウ)の乏しい施設に対し、どのようなアドバイスができるのかが自分の大きな課題となった。特に、経営アドバイスが難しいことは、経営戦略、作業手順、作業改善活動等、通常の製造業の方々に提案するようなことは施設の職員、障害をもった方々にアドバイスしても理解されにくいからである。

施設で活動する職員の方々は、福祉サービスに対する専門性は高いが、製造や経営の分野では経験も不足しているので、現状では、自助努力で、作業改善に取り組むことは、極めて困難な状況にある。

利益管理の必要性

通常、加工賃を増やしたい、施設の収益性を向上させたいと考える場合、基本的な方針は売上増を図るか、コスト削減を図るかどちらかになる。

授産施設は、元々、加工賃の占める割合が高く、コスト削減による加工賃の増加は、施設単独の対応では難しいと考えられる。

一般的に利益管理は、目標売上高等を設定し(PLAN)、営業活動や生産活動を行い(DO)、売上高の実績や実際原価との差異分析により(CHECK)、対応策を検討・実行(ACTION)することが必要である。

下請業務が減少する中、今まで以上に、利益管理の必要性を説き、景気に左右されない自主製品への移行が円滑にできるようなアドバイスができればと思っている。

今年度は、経営コンサルタントと施設に同行できる機会もあるので、助言を頂きながら、授産施設の経営改善に少しでも貢献できるようさらに努力する決意だ。(高木)