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特集

中小企業におけるコンプライアンスの確立と支援

組合員企業のコンプライアンス経営に対する支援の実態調査

今後、組合員企業がコンプライアンス経営にどのように取り組んでいくべきかについては、全体では、「法令遵守を徹底し、問題が発生しない経営を志向すべき」(25.0%)とする組合が最も多く、「法令遵守・企業倫理だけでなく、社会貢献や環境保全なども行うべき(23.3%)が続く。

ただし、食料品関連組合では、「法令遵守を徹底すべき」とする回答は5.0%と低く、「法令遵守だけでなく、企業倫理のレベルも高めるべき」(45.0%)とする組合が最も多い。食料品関連組合では、法令遵守は当然であり、食品関連企業には、より消費者の視点に立った企業倫理の確立が求められていると認識していると思われる(図表4.)。ちなみにサービス業関連の組合では、「社会貢献や環境保全なども行うべき」(47.1%)との回答が最も多かった。

図表4. 今後の組合員企業のコンプライアンス経営への取り組み姿勢

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組合員企業がコンプライアンス経営に取り組んでいく際の課題については、「経営者の意識改革」(71.5%)が「従業員の意識改革」(35.8%)など他項目を大きく上回った。これは、食料品関連組合でもほぼ同様の傾向である。また、「コンプライアンスに関する基本的な知識不足」(34.1%)や「コンプライアンス経営の具体的な取り組みノウハウの不足」(35.8%)も3分の1強の組合で課題として認識している(図表5.)。

図表5. コンプライアンス経営に取り組んでいく際の課題(3つまで)

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組合としてのコンプライアンス経営推進支援の取組み

組合が、組合員企業からコンプライアンスに関する相談を受けた実績は、「相談を受けたことはない」(81.3%)が8割以上を占めた。「しばしば相談を受ける(4半期に1件程度)」(4.1%)、「たまに相談を受ける(半年〜1年に1件程度)」(8.1%)、「過去に相談を受けたことがある」(6.5%)と、1度でも相談を受けたことがある組合は2割弱に止まった(相談事例 図表6.)。

図表6. 組合が組合員企業から受けたコンプライアンスに関する相談事例

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業種別にみると、食料品関連組合では「相談を受けたことがない」が90.5%と、ほとんどの組合でコンプライアンスに関する相談を受けていないことがわかる。

一方、比較的、相談実績があるのは建設業。耐震偽装問題などからか、「1度でも相談を受けたことがある」組合は3分の1以上(34.7%)あった。

組合が、組合員企業に対しコンプライアンスの必要性を周知徹底する活動については、73.2%が「とくに活動はしていない」と回答。実施している活動内容は、「コンプライアンスに関する各種情報の提供」(15.4%)や「外部講師を招いた勉強会やセミナーの開催」(8.9%)だが、実施組合は全体の1割程度と、ごく一部に限られている。

業種別では、建設業関連組合で比較的実施している組合が多く、「各種情報の提供」(34.8%)、「勉強会やセミナーの開催」(21.7%)などが挙げられる。

組合が、組合員企業に対し実施しているコンプライアンス経営を促進支援する活動については、8割近くの組合が「とくに支援はしていない」(79.7%)と回答。

実施内容も、2割弱の食料品関連組合で、「消費者などに対する、組合・業界としての取組みや対応状況に関する情報提供」(19.0%)を行っているほかは、ほとんど実施されていないのが実情のようだ。

今後のコンプライアンス経営促進支援の方針

今後、組合(事務局)としての、組合員のコンプライアンス経営推進に対する支援の方針については、「組合員企業のニーズは高くないが、要望があれば支援していきたい」(36.4%)とする組合が最も多い。

なお、コンプライアンス経営推進支援に対する組合員のニーズを、組合がどう認識しているかをみると、「組合員企業のニーズが高い」と認識している組合は16.9%。逆に「組合員企業のニーズは高くない」との認識をもつ組合は81.3%に上った。

また、組合の組合員企業に対する支援姿勢は、「積極的に支援する」とする組合は18.7%、「できるだけ支援する、要望があれば支援する」とする組合はあわせて(39.8%)で、これら支援に前向きな組合は、全体の6割弱(58.5%)となった(図表7.)。

図表7 組合事務局の組合員企業に対するコンプライアンス経営推進支援の取組方針

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業種別でみてみると、食料品関連組合では支援に前向きな組合が21組合中15組合(71.4%)を占め、他の業種よりも積極的に支援しようと考えている組合が多い。

一方、建設業では、支援に消極的な組合は23組合中12組合(52.2%)で、他業種に比べて若干、支援に慎重な傾向にある。

組合が、組合員企業のコンプライアンス経営促進支援を行おうとした場合の課題については、51.2%の組合が「組合(事務局)として、コンプライアンス支援に関する十分なノウハウがない」ことを挙げた。

さらに「組合(事務局)として、コンプライアンスに関する十分な知識がない」(38.2%)も含め、知識・ノウハウ不足を課題に挙げる組合が多い。また、「組合(事務局)の人手不足(業務繁忙で対応できる人がいない)」(30.1%)も3割程度みられた。

業種別では、製造業は、「十分なノウハウがない」、非製造業では、「十分な知識がない」とする組合多い。

組合員企業のコンプライアンス経営の促進支援のために中央会や公的機関に求められることは、
「コンプライアンスに関する各種情報の提供」(68.3%)や「勉強会やセミナーの開催」(46.3%)、「先進事例の紹介」(30.9%)などで要望が高い。

一方、「相談窓口の設置」(13.8%)や「専門家の紹介や派遣」(13.8%)などを望む組合はそれほど多くなく、「資金的な支援」(14.6%)も1割強に止まっている(図表8.)。

図表8. コンプライアンス経営推進支援のために中央会・公的機関に求められること(複数回答)

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