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特集

第54回中小企業団体静岡県大会
検証!共同化戦略
変革スピードに対応する中小企業組合

組合の共同化戦略の必要性と果たすべき役割

本会の山内致雄副会長からは、理事長を務める異業種組合の活動概要と共同化戦略の必要性、組合の果たすべき役割について提言がなされた。

浜松システム開発(協)は、電気計測器メーカー、各種試験機メーカー、ソフトウェア開発、電子機器卸売業の異業種4社で平成2年に設立。組合員がコア・ノウハウを持ち寄り「三次元非接触測定システム装置」の開発に成功し、現在では、組合員の主要事業の1つになるまでに成長した。

組合事業が成果を上げたポイントとして、

「組合員各社が同じ問題意識を持ち、共通のテーマを見出したこと。組合の共同事業のもとに各社が集い、それぞれが自らのアンテナを、より高くして市場のニーズを捉えたこと」の2点を挙げ、「個々の企業では実現困難でも、共同事業を通じてその実現が可能となる。組合に加入することで、様々な経営課題の解決や異なる業種とも同じフィールドで活動できるなど、組合のもつメリットは大きい」と共同化の効果を強調した。

「組合が何とかしてくれる、という受け身の考えではなく、組合員が積極的に共同化の実現に取り組み、効果の恩恵を得る。そうした能動的な姿勢と行動を取れる環境を整えるのが、我々が果たすべき役割」とあるべき組合の姿を提言した。

 

組合の共同化戦略の必要性と果たすべき役割

静岡県中小企業団体中央会 山内致雄副会長

協同組合浜松卸商センター理事長
浜松システム開発協同組合理事長
浜松技術工業団地協同組合副理事長


これまで理事長として、また理事長を支える立場で浜松卸商センターや浜松技術工業団地などの運営に携わってきた。それぞれに大きな特長があるが、今回は平成2年の設立以来、理事長を務める浜松システム開発(協)を紹介したい。この組合を紹介するのは、新たな計測制御システムの開発を目指すため、電気計測器メーカー、各種試験機メーカー、ソフトウェア開発、電子機器卸売業という異業種4社が組織した組合であるからだ。

組合員がコア・ノウハウを持ち寄り、研究を重ねた結果、レーザー光を活用し、対象物に触れることなく形状測定ができる「三次元非接触測定システム装置」の開発に成功した。これは、従来の装置に比べ操作が簡単で、なおかつ高い汎用性を誇る画期的なもので、システムの基礎となる「三次元形状測定技術」は、一昨年に特許登録をした。

それまでの経験上、企業が連携して行う製品開発では、先ずは製品ありきで、製品ができ上がってから市場を探すことが多かった。このため、いくら良い製品ができてもニーズに合わず、売上に結びつかず、やがては埋もれてしまうのが実情だった。

これらを踏まえ組合では、入念な市場調査を行い、市場のニーズをきちんと把握した上で開発に取り組んだ。その結果、でき上がった製品をスムースに販路へ乗せることができた。現在では、組合員の主要事業の一つになるまでに成長している。

20年ほど前、異業種で製品開発を目指した融合化組合が数多く誕生したが、わが組合は、融合化組合として成功した数少ない事例であると自負している。

以上のように、各企業がノウハウを持ち寄り、定めたテーマを実現させるといった活動は、組合の共同事業として最適であると思われる。

当組合が成果を上げたポイントは、次の2点にあると考える。

第一は、組合員各社が同じ問題意識を持ち、共通のテーマを見出したことにある。それが組合員一丸となり製品開発に取り組む土壌となった。

2つめは、組合の共同事業のもとに各社が集い、それぞれが自らのアンテナをより高くして市場のニーズを捉えることができたことだ。

共同化の効果は、個々の企業では実現が困難なことも、共同事業を通じてその実現が可能となるところにある。組合に加入することで、様々な経営課題の解決や異なる業種とも同じフィールドで活動できる。

「組合が何とかしてくれる」という受け身の考えではいけない。組合員が積極的に共同化の実現に取り組み、効果の恩恵を得る。そうした能動的な姿勢と行動を取れる環境を整えるのが、我々が果たすべき役割なのだ。

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原点に立ち戻った共同事業の再検証を

これらを受け、石田耕司専務理事より、設立当初の原点に立ち返った共同事業の再検証の必要性や中小企業組合の再評価などを提言。ともに手を携え難局に立ち向かっていこうと呼びかけた。

閉会にあたって 梶本忠恒副会長は、

「厳しい環境が続くが、本大会を契機に、組合組織の力を活かして、共同事業の活用に取り組み、新しいビジネスチャンスをつかむことを期待したい」とあいさつした。

 

静岡県中央会からの提言

静岡県中小企業団体中央会 石田耕司専務理事


未曾有の危機的状況にあるいま、中小企業が生き残るためには、共同化、すなわち組織力の原点に立ち、協同組合の理念を見つめ直し、活路を見出すことが、この難局を打破するキーワードである。現状においても、静岡県内には、組合組織を活用して共同事業を積極的に展開し、共同化による効果を上げている組合が数多くある。

目まぐるしく変化する厳しい経済環境を乗り越えるためには、改めて共同事業の検証が求められている。具体的には、組合員の抱える課題の把握、取り巻く経営環境を踏まえた情報の収集、分析、現状と将来への展望の中でのニーズの把握である。そのためには、組合員が共に信頼し合い、強い連帯感を持ち、本来、日本の企業が当たり前に持っていた社会的責任を果たしていくという共通認識を醸成し、得ることが前提として求められる。

今一度、組合は誰のために存在し、何をなすべきか、組合員は組合に対して何を求め、自らが何をすべきか、設立当初の原点に立ち返って、共同化を見つめ直すことが肝要だ。

言うまでもなく、我々中央会も組合の期待に応えるために、指導員一人ひとりがさらに専門性を高め、資質の向上に努め、多くの方面にネットワークを築き、専門的かつ集中的な支援が展開できる体制を整備し、組合、さらに組合員ニーズに応え、期待される中央会を目指していきたいと考えている。

これまで中小企業組合は、中小企業支援策の実施主体として大きな役割を果たし、その支援策の効果を広く中小企業に還元し続けてきた。

新中小企業基本法では、『中小企業組合はその果たすべき役割が減少し、存在する意義も大きく後退した』と位置づけられた。しかし、中小企業がかつてない危機にある今、中小企業を真に支援する中小企業施策の実行とその普及を果たす組合の役割は、以前にも増して大きい。なぜならば、個々の中小企業の事業活動が“点”であるならば、その点と点を結びつけ、さらに関係機関の支援を得ながら“面”へと広げていくのが中小企業組合のみが持つ強みであるからだ。

本会ではこの大会を契機として、我が国経済そして社会のさらなる発展を支える中小企業組合の位置づけを再評価するよう各方面に強く求めるとともに、共に手を携えてこの難局に立ち向かっていく。