google

トピックス

地域と一体になり動物園を再生
組合事務局代表者会議で岩野園長が講演

静岡県中央会・県職員協会

県中央会の主催(県職員協会協賛)による事務局代表者会議が9月24日、静岡市葵区の「ホテルプリヴェ静岡ステーション」で開催され、組合役職員など120人が出席した。

講演会では、北九州市にある到津の森公園の岩野俊郎園長が「戦う動物園。〜閉園からの奇跡の復活〜」をテーマに動物園再生への道のりや地域への思いを語った。

 

講演要旨

到津(いとうづ)の森公園 園長 岩野俊郎氏


1948年下関市出身。日本獣医畜産大学卒業。獣医師。73年西日本鉄道(株)到津遊園に就職。97年園長。

2000年同園閉園後、退職。北九州市都市整備公社到津の森公園準備室長を経て、02年到津の森公園園長。旭山動物園小菅園長と共著「戦う動物園」(中公新書)

市民が動物園を復活させた

到津の森公園は、西日本鉄道経営の「到津遊園」として、昭和7年にオープンした九州屈指の歴史をもつ動物園である。70年近くにわたり、市民の憩いの場として親しまれてきたが、経営不振から平成12年に閉園。最後の園長として辛い幕引き役を務めた。

閉園が決定されてから、26万人分もの閉園反対の署名が寄せられた。この数は全北九州市民の四分の一にあたり、わずか2週間ほどで集まった。

こうした市民の動物園存続への強い思いに北九州市が動かされ、市が運営することを決定。新生到津の森公園の初代園長として新たなスタートを切ることができた。

“ハード”から“ハート”へ

市民が求めたのは、観光施設ではなく、森を守り、動物を残した市民の憩いの場。施設は、旧来のものを使うことが条件。だが、憩いの場に必要なものは、“ハード”ではない、スタッフのサービスやホスピタリティーなどの“ハート”だと気づく。

入園料は800円。おそらく“日本で最も高い動物園”のひとつだろう。これでも採算ギリギリだ。それでも、多くの市民が足を運んでくれる。それに応えるため、入園料以上の笑顔でおもてなしをしようと、スタッフ全員が同じ思いで入園者に接している。

スタッフ全員でアイディアを

再スタートにあたり、他の動物園に先駆け、飼育係などスタッフが直接来園者に接し、動物の説明をする試みを取り入れた。動物を順路どおり見るだけでなく、飼育する意図も含め、動物をよく知ってもらいたいとの思いが強いからだ。

飼育係は裏方ではなく、動物と来園者の間にたつ重要なポジション。スタッフの顔が見えることで、市民と動物園の距離が縮まる。本来の生息環境に近づける動物の生活空間づくりも工夫した。

さらに夜間の開園やバックヤードツアー、スタッフ手作りの案内板の設置などスタッフ全員のアイディアが至るところに活かされている。

地域全体がサポーター

地域や市民との結びつきを強めるため、動物の里親としてエサ代を支援する「動物サポーター制度」や公園の運営全体を支援する「友の会」、「公園基金」など様々なサポーター制度を導入した。さらに、市民ボランティア団体による園内ガイドや清掃などの活動も盛んだ。これら市民による支援は、年間予算の一割に上る。

一方、戦前から実施している小学生向けの体験学習「林間学園」も引き継がれ、「動物園はこどもの教育の場」という位置づけも崩してはいない。

続かせようとする努力こそが重要だ

こうした取り組みから、「私たちの動物園」という意識が大いに醸成され、閉園に追い込まれた動物園とは思えないほど来園者で溢れ、そして根強い支持を受けている。

日本の動物園は欧米の影響から、どこも同じにみえる、といわれる。当園では、日本的な美しさを求めた動物園も目指している。夜間に開園するのも、間接照明による陰影に富んだ森や池などの日本の自然を味わって欲しいからだ。

これから地域間競争がますます激しくなり、動物園もその波にさらされるだろう。

永遠に続く企業はない。しかし、続かせようとする努力があれば必ず続くと信じている。