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シリーズ「くみあい百景」

共同給油所で燃料費削減を実現

名浜運送協同組合

住所:〒435-0004 浜松市東区中野町2796番地の3
理事長:今田真士
組合員:107人
設立:平成14年4月
TEL:053-422-9800
FAX:053-422-9807

 

過去最高値を更新

天竜川左岸にある共同給油所。常時、組合の保安監督者が詰めている。

1リットル185円。石油情報センターが、今年8月に発表した、レギュラーガソリンの全国平均小売価格である。この数字は、同センターが、昭和26年から調査を開始して以来、過去最高値を更新することになった。

ガソリン価格の高騰は、原油価格高騰の、象徴的な影響事例として、報道されることが多い。

原油価格は、平成11年を底に上昇傾向に転じ、同16年以降騰勢を強めてきた。同19年7月以降は最高値を更新し続け、商工業・農林水産業など幅広い分野で、コスト上昇を引き起こし、経済・家計に深刻な影響を与えた。夏場を過ぎ、ようやく下落傾向に入ってきたが、金融危機の影響もあり、なお不安定要素は残している。


共同給油所の設置

共同給油所に設置されているオートレジスター。

こうした急激なコスト上昇に対し、大手企業を中心に値上げに踏み切る企業もあるが、多くの中小企業では、価格転嫁のできない場合がほとんどである。

当組合は、こうした静岡県西部地区の砂利販売業・一般貨物自動車運送業など異業種中小企業者が、燃料費の削減を行う目的で、平成14年4月に設立された。

当時、組合員が使用する燃料である軽油は、軽油引取税の暫定税率が課せられており、利用者の多くは、燃料費のコスト削減に苦慮していた。

そこで、発起人らが中心となり、砕石関係者等へDM発送などを行った結果、100人を超える設立同意者が集まった。

「景気低迷で運賃引き下げ要請が強まるなか、税率アップ分の価格転嫁は難しい状況。スケールメリットを活かした共同事業で、燃料費の大幅な削減を目指すことが最善であった」。今田理事長は、設立当時を述懐する。

組合は、浜松市内に共同給油所を設置し、軽油の共同購入事業を実施している。

共同給油所は、東名高速道路浜松インターの南、天竜川左岸に位置する。営業時間は午前6時から午後8時まで、日・祝日は休業。給油を行う組合員は、組合から発行されたカードを、オートレジスターに通し給油を行う。

「軽油の納入先は4社。電子メールで毎月入札を行い、月単位で納入先を決定。市価より1〜2円の安さで購入することができる。将来的には、天竜川右岸にも共同給油所を設置し、利便性を更に高めたい」と理事長は、意欲を見せる。

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スケールメリットをいかす

組合では、そのスケールメリットをいかし、軽油の共同購入のほか、オイル・エレメント・タイヤなど消耗品の共同購入も行い、順調に成果を上げている。

「オイルやエレメントなどは市価の30〜50%で販売。購入品目毎に担当役員を決定し、納入先との徹底した価格交渉で、コスト削減に努めている」と君島専務理事は、その努力を力説する。


共同事業として何ができるか

「異業種のメリットをいかし、共同事業を拡大したい」と今田理事長。

組合員に発行される給油用のカード。

平成11年、中小企業基本法が昭和38年の制定以来、はじめて抜本的に改正された。これにより、中小企業の政策理念は、「大企業との格差の是正」から、「中小企業の自助努力への支援」へと大転換した。法改正以後、格差是正は軽視されつつ、業種間・企業規模間での格差は拡大してきた。

そして、新興国の台頭による国際競争力の激化、人口減少社会による市場規模の縮小など、経営環境は益々厳しくなり、収益を確保していくためには、更なるコストダウンが必要となる。

これまで当組合の共同購入事業は、消耗品など物品を中心に行ってきた。100社を超える異業種中小企業者が結集したことで、今後は、他の分野でのコストダウンも視野に入れている。

「異業種組合なので、幅広い分野に専門的な知識をもつ組合員や役員が存在する。そうした知識も活用し、自動車整備、損害保険、会計・労務など共通する部分を拾い出し、法的な問題を検討しながら、共同事業のメニューに追加したい」。理事長は、共同事業の拡大に期待を寄せる。

共同購入事業は、これまで多くの組合で利用され、大きな成果を残してきた。正に組合事業の原点と言える事業である。今、改めて、“共同事業として何ができるのか”を検証し、共同事業の再構築も必要ではないだろうか。