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視点・指導員の現場から

コーチング

問いかけ型マネジメント

会話を通じて、相手が自ら気づき、決断し、それを行動に移せるよう促すコミュニケーション技術の一つに「コーチング」がある。

職場における上司と部下の人間関係を円滑化するために採用するケースが増えており、指示命令型から問いかけ型にマネジメントが変わりつつある。

時代の変化が激しい今、人材育成の考え方も大きく変化しており、従来の上下関係で技術や知識を伝えていた手法から、対等なパートナーとしての関係を築くための手法として「コーチング」が重視されている。

やる気を引き出す

「コーチング」では、相手の気持ちを聴くことが大切となる。では、「聴く」と「聞く」との違いはどこにあるのだろうか?

「聞く」は、ただ漠然と耳に入っているだけで観察力も鈍る。「聴く」は、真剣に相手を受けとめ、言葉の意味合いを理解しようと『十四の心を持って耳をそばだてる』ことになり、相手の微妙な変化も見落とさないよう、観察力も研ぎすまされたものになる。

相手が訴えてきたことに相づちを打ったり、言葉を繰り返しながら聴くことにより、相手は『自分には価値があるんだ』と自己肯定感を持ち、安心して行動を起こせるようになる。

相手のやる気を引き出すには、まず答えやすい質問からスタートし、信頼関係を築くことが必要となる。

「はい」「いいえ」で考えなくても答えることができるクローズド・クエスチョンである。そして、話の糸口ができたところで、徐々にオープン・クエスチョンに変えていき、相手に考えて答えるよう促していく。

最も効果的な質問は、相手が「よく聞いてくれた」と思わせるような質問であり、質問する者は相手に対して常に興味と関心を持ち、高い感性を磨かなければならない。

そして、「コーチング」をする際に最も注意しなければならないことは、相手に対する批判である。上司・部下の立場となると、上司の批判は部下を無気力にしてしまう。常に上司が勝っているとは限らず、部下の意見を尊重し、向上心を煽ることが大切である。

聴くことの大切さ

秋晴れの休日、書店からの帰り道にバス停のベンチに腰をかけていた私の隣に、見ず知らずの“銜え煙草のオッちゃん”が「最近は煙草を吸える所が少なくなったねぇ」と話しかけてきた。

携帯灰皿を差し出しながらオッちゃんの話を頷きながら聴いた。50年近く現場で働き、今は監督の立場にあるオッちゃん、「俺が若い頃は親方に怒鳴られながら仕事を覚えたもんだ。でも、今はそれじゃダメなんだな。若いのがイイ仕事をした時にゃ誉めて、やる気をもっと伸ばしてあげなきゃな」と煙草を美味しそうに吸い、「兄さん、話聴いてくれてありがとよ!」と去っていった。

これまで職場で採用されることが多かった「コーチング」であるが、最近は家庭での夫婦や親子の会話にも活用されていると聞く。

私自身、もっと早く「コーチング」を知っていれば、5年後に銀婚式を迎えられたのかもしれない。

(松本)