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視点・指導員の現場から

多様な価値観に応えていく時代に

横並びの果て

解剖学者の養老孟司氏のコメントで「日本のサラリーマンは組織の規則が刷り込まれていてそこから1歩も出ようとしない。こじんまりしていて面白くない」。

更に「組織が拡大すると融通が利かなくなり、何のための仕事かを忘れて、流れてくる情報を処理するだけで仕事をしたつもりになる」と続く。耳の痛い話である。

こんな話も耳にした。

大手企業のサラリーマン社長よりも、中小企業のオーナー社長の方がはるかに富裕だ。企業規模では負けても、個人レベルではオーナー社長の完勝。同じ社長でも雇われでは期限付きの座で所詮は一給料取り。

横並びを前提とした日本的経営の中で擦り切れるまで働き、ようやく得た地位も、所詮それは会社の看板にもたれてこそのバッジ。定年と同時に賞味期限切れの抜け殻。

雇われない生き方

女性はとっくの昔にそれに気付いていて、気の利いた女性はさっさと自分で起業していく。

先日、あるフォーラムでゲストの女性起業家が、女性に理解あると噂の大手企業を名指しして

「この会社でさえ、役員になるのは男性。しかもこんなにお爺ちゃんになるまで偉くなれないんだ?」と、失望した経験談を吐露していた。

「何があっても食べていける自信がある」。

「この仕事は自分のミッションだと思う」。

「『働く』=『会社に勤める』という発想を変える必要がある」。

「スキルアップの為に連続徹夜で勉強。強いプロ意識、強い意志を持つ」。

これ全て子育て奮闘中の元専業主婦起業家の言葉。強い、しかも美人。

多様な価値観に応えていく時代に

時代が大きく変わる時、既成のルールにゆがみが生れる。そのとき、価値と価格の間に乖離が生じる。これにいち早く気付き、ためらうことなく果敢に行動を起こしていく起業家達。

一方で「学び」「結び」「癒し」「楽しさ」をキーワードに「人」を主体に地域課題を解決することに生きがいを見出す人達。

話題のコミュニティビジネスだ。グローバルビジネスで求められる経済指標一辺倒とは別の尺度で進めるビジネスだ。

行き過ぎた市場経済だけでは一人一人が真に豊かさを感じることはできない。このことに多くの人が気付き始めた。

本会の仕事の醍醐味はその間口の広さだ。従来の「高度化事業を活用した企業立地促進・設備投資支援」から「創業支援」「農商工連携」と裾野が広くなってきている。

指導員として、更に柔軟な思考と懐の深さが求められている。多様な価値観に対して自分ならどうするかとの視点を常に持ち続けたいものである。

「何のための仕事か」。的をぶらさないことを肝に銘じたい。(小林)