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富士の叫び

通常総会は、設立時の理念に立ち戻り、新たな組合像を見いだす場である

5月。いよいよ総会シーズンの始まりである。多くの組合にとり1年で一番重要な時期を迎える。

1年間の決算の承認・新年度の計画と予算の決定、中には役員改選や定款変更が行われる組合もあろう。いずれも重要な議題であり、通常総会の意義がそこにある。しかし、私は1年に1回行われる通常総会だからこそ、もう1つ重要な意義があると思っている。それは、総会に出席した1人ひとりが設立の原点へ思いを馳せることである。

どのような理由でこの組合を設立したのか?なぜ必要だったのか? 設立時の思いと設立当初の苦労などを改めて思い起こすことである。

しかし、その原点の思いが、苦労が、喜びが、二世、三世へと代替わりするにしたがい伝わりにくくなり、組合が存在していることを自明のことと感じる組合員が多いのが現実であろう。そうした意識のもとでは組合の存在価値は失われてしまう。多くの会員組合、特に歴史を重ねる組合ほど、この悩みは大きいことと推察される。

設立から20年を超えるある団地組合では、設立当時の役員が、現在の組合員企業の社長全員を集め、設立当時の思いや苦労話を研修会という形で周知させることにより、今一度組合の意義を問い直すとともに、組合員の団結の強化に役立てているという。まさに“温故知新”を体現した試みである。

県下には、設立まだ日の浅い組合から、半世紀を超える歴史を刻む組合まで、また、組合員数人から数百人の組合員を抱える組合まで、1000を超える多様な組合が存在する。しかし、いずれも相互扶助の精神によって人と人とが結びつき、共同事業を通じて、自らの経済的地位を高めていこうという理念の下に集まった共同体であることに変りはない。

組合員が一堂に会する通常総会こそ、設立の理念に立ち返り、そして時代に合った新たな組合像を見出す絶好な場として改めて活用して頂きたいと考える次第である。

静岡県中小企業団体中央会・会長 井上 光一