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クローズアップインタビュー

“偽り”や“隠しごと”は一切なし
原料にこだわり、食材本来の味を追求

静岡県こだわりの味協同組合
冨永昌良 理事長

「ウソをつかないまじめな業者から潰れていくなんて、おかしいと思いませんか?」。

効率化や合理化の名の下、地域独自の食文化や食材がもつ本来の味が失われつつあることへの憤りと危機感。そして、愚直なまでに食へのこだわりを貫く姿勢と情熱。

「全国展開する大手スーパーの地方進出や安価な輸入食材の氾濫で日本の農漁業が、地域に根付くスーパーや小売店が、そしてそこに商品を供給する我々地元の食品製造業者が淘汰されてしまう。それは地域社会の衰退につながる」。

この現状に危機感を抱く県内の食品製造業者らを束ね、組合を立ち上げたのは平成8年。食の安全・安心神話を根幹から覆した食品偽装問題が続々と表面化する数年前のことだ。

組合が掲げるこだわりは“原料”、“添加物”、“価格”、そして“味”。これを具現化するために、組合では組合員が製造する商品を『自然の味そのまんま』として認定。ラベルを貼付し、組合ブランドとして共同販売する。

その認定は、消費者やスーパーなど小売業者、専門家ら25人で構成する認定委員の全員一致が条件だ。事前審査を含め出品される商品の9割がふるい落とされるという高いハードルが設けられている。

「例えば、梅ジャム。梅そのものの栽培履歴はいうまでもなく、その梅に使われた農薬の使用履歴まで求められる。法的には表示する義務のない添加物も全てオープンにしなければ、認定されません」。

この厳しい認定基準をクリアして店頭に並ぶ商品は、現在約450アイテム。販売先は組合の趣旨に賛同し賛助会員となった全国のスーパーや小売店に限られる。

「何も目新しい商品を求めているわけではありません。必要以上に農薬を散布するな、添加物や見栄えをよくする着色料を使って、食材本来の味を曲げるなということ。我々が子供のころに食べていた自然の味をとり戻したいだけ。消費者もそれに気づき、小売店も真剣になってきた。ウソをつかない仕組みを築きたい」。

父が個人商店として興した納豆製造業を26歳で法人化。国産大豆にこだわり、地域や年齢を問わず、教えを請う。

「こっちが真剣に問えば、相手も真剣に応えてくれる。これで終わり、はない。生涯倦まず飽きず、を貫きたいね」。

古銭研究で有名な「静岡いずみ会」の代表として、多くの専門書を著すなど、斯界第一人者の横顔をもつ。

「今、研究しているのは古代から70年ほど前までのベトナム貨幣史。カネになる? 商売じゃないからここまで打ち込めるんだよ(笑)」。