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特集

第55回 中小企業団体静岡県大会
イノベーション! 組合の挑戦
〜ものづくり、ひとづくりそしてまちづくり〜

ものづくり

「ものづくり」とは、古来大和言葉で、広辞苑によれば農作を表すものであるが、日本の製造業とその精神性や歴史を現す言葉として、1990年代から盛んに使われるようになった。現在の日本の製造業の繁栄は、海外から入ってきた技術だけで成り立っているのではなく、高度な職人技などに由来した技術などに支えられていると評価されている。

2000年には、「ものづくり基盤技術振興法」が施行され、“製造業を日本経済の基幹産業”と位置づけ、製造業の育成強化や熟練技能者の地位向上を謳うに至っており、各種の支援施策が展開されている。

日本の製造業は、高い技術力、開発力をもつ元気な中小企業群によって支えられている。これら中小企業の多くは独自の分野で高い競争力を持つとともに、人材育成や技術力の継承で独創的な手法を採っている。厳しい経済環境下に“活路”を切り開いていけるのは、「ものづくり」に挑戦し続ける企業家マインドであろう。

先進事例 企業組合静岡機械製作所

シーマ方式を活用した過熱湿熱炉
  • 所在地:静岡市葵区吉津590番地
  • 組合員:19名

超高温加湿蒸気を用いた加工技術を活用した食品加工機械の開発

【取組みの経緯(背景)】

当組合は、半世紀以上にわたって製茶仕上げ機のメーカーとして事業を行ってきたが、緑茶消費量の低下に伴い、生産台数は減少していた。そこで独自の技術である製茶熱処理加工技術(シーマ)を活かして、食品加工分野への進出を計画。食品メーカーを中心に、製品の付加価値を高める提案を行うことで、販路の開拓に取り組んだ。

【取組みの効果】

シーマ方式を根菜類の加工に応用。超高温加湿蒸気を用いた皮むき加工技術により、従来、捨てられていた皮と実の間にある栄養価の高い部分を食材として活用することが可能となった。

【課題と今後の展望】

緑茶の消費量は、今後も減少傾向にあると言われている。こうした中で、シーマ方式は食品業界を中心に高い評価を得ており、応用した製品への引き合いも多い。今後もさらなる改良を重ね、新たな市場への進出を目指していく。

 

まちづくり

「まちづくり」には、明確な定義があるわけでない。都市開発や地域社会の活性化など、さまざまな分野で使われており、ある地域(まち)が抱えている課題に対して、ハード・ソフト両面から課題の解決を図ろうとするものであろう。

地域の抱える課題には1.商店街の衰退2.日照など環境の悪化3.工場跡地の処理方針が決まらない4.道路などインフラの遅れ5.住民の高齢化、などがあるが、特に既存商店街や中山間地などの衰退地域において解決すべき課題が山積している。

村おこしやまちおこしのような観光振興的な面からも、まちづくりは考えられる。「まちづくり3法」「都市計画」「コンパクトシティ」「合意形成」「地域力」「コミュニティビジネス」など関連したキーワードは多い。

まちづくりを進めるためには、従来の「商店街は商店街だけ」の考え方から脱皮した新たな考え方で臨む必要があろう。 空き店舗対策は限界が来ているし、中山間地等の定住人口の増加対策も限界がある。

「まちづくり」には、主権者としての住民の参画が欠かせない。まちづくりはまさに連携体であり、これを進めるためには、トップのたぐいまれなリーダーシップをはじめ「よそもの」の客観的な目や若者の声、農林・水産業との連携などを取り入れた、よりネットワークの広い活動が望まれる。

先進事例 協同組合まちづくり案内人・和座

  • 所在地:静岡市清水区袖師町1074番地
  • 組合員:4名

地域の夢実現へ、協働型コンサルティング

【取組みの経緯(背景)】

刻々変わる社会環境の下、まちづくりに取り組む地域の人々の水先案内人となり、親身で専門的なサポートを提供しようと設立。建築士、土地家屋調査士、企画・デザイナー、コンサルタント等「まちづくり」の専門家の協働によるコンサルティングを開始した。

【取組みの効果】

地域により、まちづくりの経緯や資源、取組方法は異なるため、それぞれに合わせたオーダーメイドのまちづくりをサポート。依頼者の地域の課題把握、目標設定、行動プロセスの具体化や実施支援などの総合的なコーディネイトを行う。依頼者からは「もやもやとした想いを整理し、目標を明確に、具体的な行動が取れるようになった」という声が多い。地域の特徴を活かした来訪者へのおもてなしを依頼者とともに考え、支援先であった「富士市まちの駅」が「静岡県コンベンションおもてなし大賞」を受賞した。

【課題と今後の展望】

まちづくりを「自らの思いを強く出し、地域を良くしようとする取り組み」と捉え、個人や企業、団体などがまちづくりに参加しやすいような雰囲気作りに心がける。行政や各種支援団体との連携を一層図り、支援が届いていない地域のサポートを強化していく。

 

ひとづくり

言うまでもなく、「ものづくり」や「まち(地域)づくり」に成果を上げるために最も重要なものは「人材」である。

優れた「ものづくり」を成し遂げるためには、優れた技術を持った熟練技能者の存在が欠かせないし、またその技能を継承していくシステムや人材育成方法の確立が必要となる。また、経営者は明確な経営理念、将来に対するビジョンなどを有し、より広範囲な情報収集分析能力を持つことが要求されている。イノベーションを成し遂げることができるのはまさに、新たな思考で考える「ひと」に頼る部分が大きい。

他方、「まちづくり」においても、主体となる住民や商業者、サービス産業、そして農林水産業も含めあらゆるジャンルの、さまざまな才能をもつ「ひと」が連携し、相乗効果を上げてこそ可能なものであろう。

特に、リーダーの資質については、客観性、情報やネットワークの多様性、バランス感覚さらには、多様な人々をリードし、コーディネートしていく能力など複合的な要素が要求されてくる。また、男女共同参画社会の実現や若年層の能力開発、勤労意欲・働き甲斐の醸成のために、女性や若年者の積極的な活用も強く望まれている。

先進事例 静岡県溶接工業協同組合

  • 所在地:静岡市清水区大坪1丁目5番15号
  • 組合員:381名

人材の確保と従業員のスキルアップを目的とした研修会等の開催

【取組みの経緯(背景)】

溶接業は3K業種のため、後継者の育成や若年者の採用が難しい状況が続いていた。その一方で施工技術は年々進歩し、人材の確保と技術者の養成への対応に迫られていた。

【取組みの効果】

参加者の技量に応じて各種技能研修会を開催。技術のさらなる向上が図られ、全国溶接技術競技会での入賞者も多数輩出している。また、職場環境の改善や労務管理に関するセミナーを通じ、組合員各社において安全な作業環境づくりが着実に進められるなど、その効果は大きい。

【課題と今後の展望】

人材の育成や技能の伝承を円滑に進め、技術者の養成を継続的に行うことが課題。組合では今後も、さらなる技術力の向上、そして作業環境の改善による人材の確保という観点から、各種技術・技能研修会と職場改善や労務管理に関するセミナー等を、段階的かつ継続的に開催していく。

関連リンク

静岡県溶接工業協同組合