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特集

第55回 中小企業団体静岡県大会
イノベーション! 組合の挑戦
〜ものづくり、ひとづくりそしてまちづくり〜

働く場の提供が地域活性化の第一歩

基調講演では、一橋大学大学院関満博教授が「地域産業への直言〜“ものづくり” “ひとづくり” “まちおこし”の現場から〜」のテーマで地域や産業のあり方について語った。

関教授は、
「日本の“村”は、“平成の大合併”を経たこの10年で3分の1以下に減少し、大きく3つに分解された。第1は、自ら一村での運営を選択した“自立した村”、第2は、合併から“取り残された村”、そして第3は、合併に“飲み込まれた村”である」と分析した上で、岡山県新庄村の事例を紹介。

「人口約1000人、高齢化率40%の同村は、合併により“辺境”になることへのおそれ、水力発電所からの一定の保証金=収入、村の未来を考え続ける人がいなくなることへの危惧、などから自立を選択した。村では、女性グループが村の加工場を利用した農産品の生産販売などを通じ、生き生きと活動している。こうした場の提供こそが地域活性化の第一歩だ」と説いた。

さらに、中山間地域の農村の女性たちが展開する“農産物直売所”について、
「“直売所”は、全国で約13000ヵ所、総売上1兆円にのぼる数少ない成長分野のひとつだ」と説明。その意義として、
「農村の女性が自分名義の口座=通帳を持ったことで、売上が“成果”としてストレートに伝わるという喜びを得たこと。生産者と消費者が直接結びついたこと」の2点を強調した。

「直売所に加え、農産物の“加工場”や地元の農産物を利用した“農村レストラン”は、新たな雇用を生み出すとともに、中山間地域に希望や勇気を与える“3点セット”だ」とした。

また、我が国の産業形態について、
「従来は、省庁ごとに産業の概念が異なり、それぞれが専門職化し、互いの世界に踏み込むこともなかった」と指摘。

「こうした縦割り行政の弊害をなくすために、昨年施行されたのが“農商工連携法”。結びつきの弱かった農林水産業と商工業の連携を強力に進める施策として、大きな注目を浴びている」と期待した。

終わりに日本の産業について、
「素材や用途開発などの“川上”と、消費に近い領域のサービス的な“川下”に特化した産業の育成なくして、厳しい国際競争を生き残っていくことはできない」と結んだ。

連携を強め、「ものづくり」、「ひとづくり」、「まちづくり」の展開を

岸本道明事務局次長より、本大会誌の内容や大会提言に至る経緯について説明がなされた後、諏訪部敏之副会長が、企業独自の“ものづくり体制”構築や付加価値の高い新たな経営の実現化、相乗効果を発揮した組合事業や組合員間の連携強化、地域住民と意義を共有した「まちづくり」の展開、技術・技能を次世代に引き継ぐための対策、次世代を担う経営者の育成などの8項目を盛り込んだ大会提言を朗読。

現場主義に即した組合事業に積極的に取り組むことを参加者一同で確認した。

大会提言

静岡県中央会
諏訪部敏之 副会長
  1. 一、組合および中央会は、ものづくりを支援するため、ニーズをきめ細かく吸い上げ、各種支援策の積極的活用などにより、企業独自の「ものづくり体制」を構築し、付加価値の高い新たな経営を実現化すること。
  2. 一、組合や各種団体、支援機関との連携を一層促進し、相乗効果を発揮した組合事業に取り組み、組合員間の連携強化を図ること。
  3. 一、組合員が取り組む「経営革新」「新連携」「地域資源活用」「農商工連携」や「ものづくり補助制度」などの中小企業支援策の積極的な活用を支援すること。
  4. 一、「まちづくり」は、地域全体をどのように振興していくかといった視点に立ち、そのなかで商業の位置づけを考え、地域としての「街」の枠組みを考えていくこと。
  5. 一、地域住民と共に、「まちづくり」の意義を共有した共同意識の下で連携を図りながら幅広く活動を展開すること。
  6. 一、「まちづくり」には、大胆な発想と行動力を持つ「若者の支持」と、地域の良さを客観的に観ることができる「よそ者の視点」が必要であるが、「若者」や「よそ者」を受け入れる懐の深さを示すこと。
  7. 一、組合員が保有する技術・技能を貴重な資源と位置づけ、次世代に引き継ぐ具体的対策を講ずること。
  8. 一、次世代を担う経営者の育成のため、組合青年部の結成に努め、情報収集力、企画力、表現力、折衝力など今日的課題やテーマを明確にした青年部活動を実施すること。