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クローズアップインタビュー

全国大会で組合功労賞
醤油の復権、信頼向上に全力

静岡県醤油醸造工業協同組合
理事長 山中一成氏

10月19日、東京で開かれた中小企業全国大会で、全国から選ばれた72名が組合功労者として栄えある表彰を受けた。その1人である。

「私自身、大したことはしてません。先輩や関係者が積み上げてくれた功績が認められただけ」と受け止め方はあくまで謙虚だ。

平成10年、先代理事長の鈴木昇太郎氏が70歳を迎えたおり、「次はあなたに」と出番を告げられた。次期理事長と目されていた当時の専務理事が逝去した事情もあっての人事だが、「心の準備もなしに大役を…」というのが偽らざる心境だった。加えて理事長就任直後、組合50周年を祝う大イベントが翌年に控えていることを知らされ、「2度おどろいた」と振り返る。

醤油業界は、多くの課題を抱えたまま今日を迎えている。長く続く販売価格の低迷、出荷量の減少。加えて、原料となる大豆や石油価格の高騰は大幅なコストアップをもたらした。組合設立当初171社あった組合員の数は、今や38社と4分の1以下に減った。「生き残るには食育を通じた醤油の復権、安全・安心に向けた消費者の信頼向上などに業界一丸となって取り組んでいかなければ」。

また、組合員などに醤油原液を供給する2つの協同工場の統合も検討材料だという。「可能ならば2工場を1つにするなどして、稼働率を上げていく。製造コストを下げることで、組合員の競争力をつけたい」。

昭和53年、42歳で同組合の理事に就任。思い出すのは、翌54年に実施した活路開拓調査事業だ。事業実施に名乗りをあげ、自らは委員長に就いて学・官を交えた新商品開発に臨んだ。こうした興隆機運のなか、組合青年部「わかむらさき会」の発足にも奔走し、推されて初代会長についた。全国に先がけたその活動は、他県の醤油組合の青年部発足に大きな影響を与えたほどだ。

昭和55年、明治創業の歴史をもつ山中醤油株式会社(現ヤマキン)の3代目社長に就任。平成9年には念願の新工場を立ち上げた。現在は社長業の傍ら、全国醤油工業協同組合連合会評議員や焼津商工会議所評議員、中央会理事など業界内外で広く活躍中。今秋設立した県食料産業クラスター協議会にも、県食品産業協議会副会長として参画した。

東京農大醸造学科を卒業して家業に就職。「 “修行”でもしてからと思っていたら、すぐに親父に呼び戻されちゃったよ」と笑う。

最近の楽しみは、お酒。それも、学生時代の旧友と酌み交わす明るく和やかなお酒だ。69歳。