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富士の叫び

企業は人間教育の一翼担う自覚を

今年も、はや師走を迎えた。

「光陰矢の如し」とはよく言ったもので、この時期決まって時の流れは速いものだと痛感させられる。振り返れば、本年も相変わらず悲惨な事件が続発したが、殊に小中学校生の相次ぐ自殺や親の身勝手による子供への虐待・殺人の多発には憤りを覚える。こうした中、11月に教育基本法の改正案が衆議院を通過した。

1947年の法制定以来約60年ぶりの全面改正で、「わが国と郷土を愛する態度を養う」ことを教育の目標に盛り込み、前文では「公共の精神を重視」する表現を加えた。伊吹文部科学大臣は「日本特有の規範意識を復活させ世界共通のモラルを維持する努力をすることが根本哲学」と明言している。

構造改革の歪みにより拍車のかかった過度な競争社会は、刹那的な自己中心主義を生み出し社会モラルは崩壊の危機に瀕し、遅まきながら政府も重い腰を上げる形となった。しかし、今回の改正は教育の大枠が形成されたにすぎない。これからの教育にどう活きるのか、教育現場を担う教師・学校・教育委員会が如何に実行に移していくかが今後の課題として残されている。

さて、視点をかえれば「人材こそ財産」とされる中小企業にとっても、職場における教育は経営戦略を左右するほどの重要な位置を占める。たとえば、よくいわれる「5S運動」は企業モラルの向上、それによる従業員の意欲喚起を促し事業の発展・職場の安全衛生管理を維持するためのものであるが、厳しい経済環境を乗り越えるための教育運動といえる。同時にそれは、地域社会における人間育成という役割も果たしている。

教育は国家100年の大計と言われる。希望の持てる社会を形成することが急務とされる今日、教育界のみならず企業や地域、行政が一体となって次世代育成にむけた弛まない自助努力を続けていかなければならない。経営者もその重要な担い手として、職場教育の意義を今一度、認識してほしいものである。

静岡県中小企業団体中央会・会長 井上 光一