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組合トップセミナー・新春交流会
新たな連携を探るジャーナリストの三神万里子氏講演

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ひとくちに“連携”といってもそのニーズや目的によって、チーム編成やマネージメントの手法などその形態は異なる。

IT産業育成を産業政策の柱に据える福岡県飯塚市は、平成15年に“アジアIT特区”に指定され、若手企業家を中心に90社以上のIT企業が集積。中国やインドの企業も多く進出するITビジネスの一大拠点である。この背景には特区指定に加え、同市が大学や民間の研究機関、産業支援機関などと連携し、起業や研究開発を進めるために設置したインキュベーション施設の存在も大きい。また地元の金融機関の協力や支援も欠かすことのできない要素である。

名古屋や京都の繊維業者が展開するのが“インパナトーレ”という連携の形態である。インパナトーレとは、イタリアの織物産地などで活躍するコーディネーターを指す。その役割は自らの企画機能を最限に生かして、部門ごとのエキスパートをコーディネートし、ベストチームを組むことにある。単独では実現困難な企画が、複数企業のコラボレーションによって具現化できる。

ヨーロッパ、特にスイスの製薬会社に見られるのが、共同IRのための連携である。企業が提供する商品やサービスを不特定多数に知らしめるPRに対し、IRとは、企業価値が適正に評価されるよう株主や投資家など特定の人々を対象に、企業そのものの情報を開示することを指す。

企業単体でのPRの効果は限定的だが、業界が共同でイベントを実施することで、マスコミ取材などを通じた高い広告効果が可能となる。

大阪の“RooBO”は産業創出プラットフォーム型連携の成功例だ。これは複数の企業や研究者が連携しロボット開発に効率的に取り組むため、国が推進する産業クラスター計画の拠点組織として設置されたもので、次世代ロボットの企画・設計から生産まで、総合的に対応できる開発プラットフォームとして注目を浴びている。

これら企業の枠を超えた連携のほか、企業内連携を積極的に進める企業の代表格がシャープである。多くのヒット商品を生み出す同社では部署を横断しアイディアを出し合い、それが採用されれば、社長直轄チームとして、現在の部署を離れプロジェクトを組むことが許される。こうした柔軟な対応が発明に近い同社の商品開発力の源泉となっている。

以上のように連携には様々な形態が存在するが、その形態を問わず産業創出には何層にも及ぶ段階がある。

ターゲットとする産業や分野が絞り込まれている場合、各段階にプレイヤーが存在することや並行的に情報交換できる環境にあること、本業と無理なく兼ねることができるなどの条件をクリアすることが連携成功のためのポイントとなる。