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「京都議定書」の発効

 先月の二月一六日、懸案の「京都議定書」が発効した。この瞬間、同議定書は法的拘束力をもつこととなり、人類は地球温暖化防止に向け歴史的一歩を踏み出したといえる。
 議定書は一九九七年の国連会議で採択された文書で、二○○八年から二○一二年の間に二酸化炭素など温室効果ガス六種類の排出を、一九九○年に比べ先進国全体で約五%削減することで合意。日本は、六%の削減を国際公約した。
 地球温暖化の影響は全く測り知れないものがあるが、このまま推移すれば、人間の生活環境に深刻な事態を招くことが指摘されている。大型台風の異常発生や集中豪雨の頻発、世界規模の干ばつや北極・南極の氷山溶解、動植物の生態系異変。これらは、温暖化と密接な関係にあることが判明しつつあり、安定した自然豊かな地球環境を残すためには、大量生産・大量消費に支えられた現代人の暮らしや企業行動を一挙に変えるほどの強い覚悟が求められている。
 こうした中、政府は公約達成のために官公庁や企業、国民の役割を明確にする「京都議定書目標達成計画」の策定作業を進めており、今年五月上旬にも正式決定する見通しを示した。
 当然のことながら、業界に対しては個別の目標値が定められるなど、各分野における一層の省エネ対策や物流効率化などが求められるはずだ。今から高効率の技術促進や環境ISOの認証取得など自発的な企業行動をおこすことが、課された目標値を達成する重要な鍵となる。
 環境対策にはコストがかかる。また、省エネなどの強制は経済活動を抑制するのではないか、と危惧する声もある。しかし、かつて自動車の排ガス規制の強化が新しい技術の進展を促し、新たなビジネスチャンスを産み出してきたという事実も忘れてはならない。温暖化防止は現代人に課された最大の責務である。英知と勇気をもって、それぞれが実効のあがる行動に移されることを期待して止まない。

静岡県中小企業団体中央会・会長



中小企業静岡(2005年3月号No.616)