静岡県中小企業団体中央会Shizuoka Prefectural Federation of Small Business Associations. |
昭和43年10月1日 |
CHUOKAI MONTHLY 2009 April No.665 駐車場事業を基盤に 文化財を活用したまちづくりを下田市商業協同組合
開国の歴史溢れる伊豆半島の南部に位置する下田市。天城山系から続く急峻な山々と入り組んだ海岸線は、透明度の高い海と相まって、美しい景観を醸しだす。 古来から、東西海上交通の要衝をなし、幕末には黒船来航により日本で最初に領事館のおかれた、開国のまちとして、歴史上に大きく名を残している。 温暖な気候と豊富な温泉にも恵まれ、年間約340万人の観光客が訪れている。 当組合は、市中心街の小売業、飲食店、サービス業などの商業者93人が、共同駐車場の整備を目的に昭和49年に設立された。 順調な駐車場事業
下田市は面積の約8割を山林・原野が占め、平坦な土地が極めて少ないまちである。組合が設立された昭和40年代は、高度成長期によるモータリゼーションが進行していた時期であった。 「当時の下田は活気に満ち溢れていた。車社会の到来で駐車場不足は深刻。下田駅付近に大型店の出店計画もあり、地元商業者が結束し、共同駐車場の取得に踏み切った」と大川理事長は述懐する。 昭和50年、下田駅前の幹線道路沿いに、約500坪の土地を取得。駐車スペース85台の駐車場を整備した。 「組合員1人あたり10万円を出資し自己資金に充当。残りは金融機関の借入れで対応した。経済環境や立地環境の良さから、順調な運営を重ねてきた」と理事長はこれまでを振り返る。 平成8年には、自動精算システムを導入。年中無休の24時間営業体制を確立させた。 駐車場は平地自走式のため、RV車・1BOX車などの大型車の利用も可能である。 駐車料金は、最初の1時間が300円、以後1時間毎に200円となっている。 駐車場内にある組合事務所では、1時間券(300円)、2時間券(500円)、5時間券(1,100円)を販売。組合員は、それぞれを購入し、自分の店の買い物客に渡している。 「自動精算機の導入で、基本的には無人で対応している。トラブル発生時は、駐車場付近の組合員が直ちにかけつける体制を整えている」。理事長は顧客への配慮を強調する。 文化財でまちづくり
共同駐車場から道を1本挟んだ東側。平成19年、国指定登録有形文化財に登録された「旧南豆製氷所」が隣接する。 組合の主力事業は、共同駐車場の整備運営であるが、この旧製氷所を活かしたまちづくりにも組合は取組んでいる。 旧南豆製氷所は、大正12年に建設された伊豆石づくりの製氷工場で、約80年にわたり下田の漁業を支えてきた。平成16年に製氷工場としての使命は終焉したが、貴重な産業遺産として保存が望まれている。 組合は、旧製氷所が廃業した直後、組合員の出資や、銀行借入れでこれを購入。下田TMO(まちづくり会社)とともに、旧製氷所を活かした、歴史あるまちづくりに着手するようになった。 「地元の伊豆石をふんだんに使用し、大正ロマンの面影を残す旧製氷所は下田市の貴重な財産。歴史ある伊豆石建造物を未来に残し、まちづくりにつなげたい」。理事長はその意義を語る。 旧製氷所の保存運動は市民をも巻き込み、TMO・市民団体等が一体となって活用案を検討。シンポジウムや旧製氷所でのイベントも多数開催してきた。 しかし、次第に活動資金も限界に達し、さらに旧製氷所の劣化も進んでおり、維持管理に多額の資金が必要であった。組合では旧製氷所の駐車場化案も検討せざるを得ない状況であった。 「借入金返済等の理由から断腸の思いで売却を決意。市の仲介で理解ある個人に引き継ぐことができた。旧製氷所の活用は下田市のためどうしても必要。新たな計画づくりに協力は惜しまない」と理事長はその意志を強調する。 組合は旧製氷所を核としたまちづくりのため、市に600万円を
寄贈。文化財を活用した歴史あるまちづくりへの取組みは続く。
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