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「中小企業経営承継円滑化法」施行される
事業承継税制適用のベースとなる要件を規定

資料提供:中小企業庁

わが国経済の基盤を形成する中小企業の事業承継の円滑化は、地域経済の活力維持や雇用確保の観点から重要な政策課題である。

こうした中、事業承継円滑化に向けた総合的支援策の総仕上げとして、事業承継税制の基本的枠組みや遺留分の制約の解決のための民法の特例、事業承継円滑化のための金融、支援措置を盛り込んだ「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律」が本年5月に成立公布され、この10月1日(民法の特例に係る規定は平成21年3月1日)から施行された。

事業承継を取り巻く現状

中小企業は、わが国企業の約九割、雇用全体の約七割を占めるなど、日本経済の基盤を形成している存在である。このような中小企業の事業承継を円滑化することは、事業の継続・発展を通じて雇用確保、地域経済の活力維持に資するものとして極めて重要である。特に、ここ25年間で中小企業(資本金1000万円以下)の経営者の平均年齢が5歳上昇し、58歳になるなど高齢化が進んでおり、中小企業の事業承継問題への対応が緊急の政策課題となっている。

実質的に所有と経営が一致している中小企業においては、経営者の相続に伴ってさまざまな課題が発生する。

第一に、後継者以外の相続人の遺留分(子供や配偶者に民法上保障される最低限の資産承継の権利であり、原則法定相続分の半分)が制約となって、先代経営者が保有する自社株式や事業用資産を後継者が集中して承継できない場合がある。

第二に、資金調達の困難性が挙げられる。経営者の交代に伴う事業承継に際しては、金融機関に対する信用力の低下が生じると同時に、経営の安定化のために後継者や会社が自社株式等を取得するなどさまざまな資金ニーズが生じることがある。

第三に、先代経営者の相続開始に伴い、自社株式等を相続した後継者に多額の相続税が課税される場合がある。この際後継者が納税資金としての現預金を十分に保持していない場合や、仮に納税資金に見合うだけの現預金があっても中小企業経営者の多くは会社の債務について個人保証をしている場合もある。

こうした相続税の負担は、中小企業経営者にとって事業承継の際の大きな、障害の1つとなっていた。

中小企業経営承継円滑化法の概要

遺留分の民法特例

本法では、まず、遺留分の制約への対応として、3年以上事業を継続して行っている非上場中小企業の後継者が、先代経営者の遺留分権利者全員との間で遺留分の算定に係る合意を行い、経済産業大臣の確認及び家庭裁判所の許可を経ることによって、当該合意の効力が生ずるとしている。

具体的には、後継者が先代経営者からの贈与等により取得した自社株式について、

  1. 遺留分を算定するための財産の価額に算入しないこと
  2. 遺留分を算定するための財産の価額に算入すべき価額を合意の時における価額とすること

が可能となる。これら民法の特例の適用を受けることにより、後継者が取得した自社株式に対して先代経営者の相続開始後に遺留分減殺請求がなされ、自社株式の分散によって経営が不安定化となることを未然に防止することが可能となる。

なおこの遺留分に関する民法の特例については、最高裁判所規則の制定や実務家への周知期間等を考慮して、平成21年3月1日から施行される。

中小企業経営承継円滑化法の概要 表

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金融支援措置

事業承継時の資金調達を支援するため、先代経営者の死亡等に起因する経営の承継に伴い、事業活動の継続に支障が生じていると認められる中小企業者が経済産業大臣の認定を受けた場合において、1. 中小企業(会社及び個人事業主)の資金の借り入れについて信用保険を別枠化する 2. 中小企業(会社)の代表者に対して(株)日本政策金融公庫などが必要な資金を貸し付けることを可能とする(現行は代表者個人への融資は不可)などの金融支援措置を講じている。

これにより親族外承継や個人事業主の事業承継など幅広い資金ニーズに対応することが可能となる。

事業承継税制の適用要件

事業承継時の障害の1つ相続税負担問題を抜本的に解決するため、非上場中小企業(会社)の自社株式に係る相続税の軽減措置が、現行の10%減額から80%納税猶予に大幅に拡充されるともに、対象も中小企業全般に拡大される。本制度は、21年度税制改正で創設され、本法施行日である本年10月1日以後の相続に遡り適用される。

また、本法における経済産業大臣の認定を受けた中小企業の自社株式が事業承継税制の適用対象となる予定である。このため、本法の省令において事業承継税制の適用要件のべースを定めている。

具体的には、先代経営者の生前における計画的な承継に係る取り組み、相続前後の相続人・被相続人の株式保有要件といった各種の要件を定めるとともに、当該認定を受けた後における雇用確保を始めとする5年間の事業継続要件を定めている。

事業承継税制の適用要件 表

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