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特集

「地域中小企業応援ファンド」の創設

地域資源を活用した新たな取組みを掘り起こすために、予算とは別枠で新たに「地域中小企業応援ファンド」も創設された。

中小企業基盤整備機構が持つ投融資機能を活用し、今後5年間で2000億円程度の資金枠を確保する見込みだ。

同ファンドは、地域資源を活用した初期段階の取組みなど、新事業のシーズ(種)を発掘する「スタート・アップ応援型」と株式公開を目指す地域の成長企業を支援する「チャレンジ企業応援型」の2つのメニューを用意。ともに都道府県や地域金融機関が参画できる枠組みになっている。

とくにスタート・アップ応援型では地域資源の発掘に力を入れる。中小機構がファンドを組成する都道府県に対し、ファンド組成に必要な資金の一部を無利子で貸し付け、都道府県を通じてファンド管理者(都道府県から拠出を受ける公益法人等)に無利子で貸し付ける。中小機構はファンド総額の8割を上限に負担。ファンドの運用益で地域資源を活用した中小企業の取組みに対して助成する仕組み。

都道府県が策定する「基本構想」へのファンドによる支援事業計画の盛り込みも実現しそうだ。

金融・税制支援措置

金融措置

  • 政府系金融機関による低利融資
    法律の認定を受けた中小企業等に対して、必要な設備資金及び長期運転資金に対して低利融資[特利(3)]
    を措置。
  • 債務保証枠の拡大(中小企業信用保険法の特例)
    法律の認定を受けた中小企業等に対して、普通保証2億円等に加えて、それぞれ別枠で同額の保証を認める。
  • 高度化無利子融資
    法律の認定を受けた組合が行う施設の整備に対する無利子融資。
  • 中小企業投資育成株式会社による出資
    法律の認定を受けた株式会社が行う資金の調達を支援
  • 食品流通構造改善促進機構による債務保証等
    法律の認定を受けた中小企業等に対して、必要な資金の借入れに係る債務保証等を行う。

税制措置

  • 設備投資減税(中小企業等基盤強化税制)
    法律の認定を受けた中小企業等が、
    −機械及び装置を取得した場合、取得価格の7%税額控除、又は30%特別償却等
    −機械及び装置をリースした場合、リース費用の総額の60%相当額の7%の税額控除
関係省連携による支援

総務省・文部科学省・厚生労働省・農林水産省・経済産業省・国土交通省

各分野横断的な対策

  • マーケティング人材等のネットワーク化(観光カリスマ等)
  • 「地域中小企業サポーターズサミット」の開催
  • 「頑張る地方応援プログラム」(総務省)との連携
  • 研究開発に係る産学官連携の促進
  • 海外を含めた販売機会の拡大(国際空港にアンテナショップを開設を検討)
  • 支援対象の拡大(農業法人、旅館組合など)

食品産業分野

  • 食品流通構造改善促進機構も支援に協力
  • 食料産業クラスター展開事業の加速化(農工連携の促進)

観光分野

  • 国際観光振興機構も支援に協力
  • 観光関連施策(観光まちづくり、ビジットジャパンキャンペーン、ニューツーリズム促進等)との連携

医薬品等分野

  • 医薬品規制等に係る相談窓口の設置

建設分野

  • 地域資源を活用した建設業の新分野進出の促進 等

「地域中小企業サポーター」

地域資源を活用した中小企業の新たな事業展開を後押しするサポーターとして、地域の優れた支援人材や先駆的な取組みを行う中小企業経営者ら全国で活躍する地域リーダー138人が、国から「地域中小企業サポーター」に任命された。

全国各地で開催される地域資源活用のイベントやシンポジウムに、講師などとして派遣され、地域の中小企業をバックアップする。3月から全国10地域で「地域中小企業サポーターズサミット」(地域資源フォーラム)が順次開催され、地域資源活用の気運を盛り上げた。6月には東京でサポーターズサミットの全国大会も開催されるなど様々な仕掛けが全国で展開される。

 

独自の摘採方法と製茶方法でカフェイン量50%オフ・葉緑素1.5倍増を実現した。

地域資源を有効に結び付け、新たな製品や販路、地域ブランド創出などを図るため、昨年発足した県食料産業クラスター協議会などが主催する「地域資源活用セミナー」が、6月21日、静岡市内で開催された。

同セミナーは、県内の食品産業と農水産業との連携を支援するため開催されたもので、事例発表と講演会の二部構成で実施。

事例発表では、低カフェイン粉末茶の開発に成功した(株)荒畑園(牧之原市)の荒畑榮社長からその特徴や開発の経緯、製法、商品展開について報告された。

同社が開発した低カフェイン粉末茶は、カテキンの多い芽を独自の摘採方法で摘み取り、力を加えない特殊な製茶方法により、従来の粉末茶に比べ、カフェイン量を半分に抑えることに成功。さらに抗菌作用に優れる葉緑素を1.5倍に増量し、鮮やかな緑色を出したほか、苦味がなく口当たりの良い風味で冷水にも溶けやすいことから、加工食品用素材としても期待される。今後は加工食品開発の提携先開拓を進め、新たな静岡ブランドとして広く普及を図る考えだ。

また、同社と連携し共同研究を進めた静岡県立大鈴木次郎薬学博士(産学官連携推進コーディネーター)より、医薬品賦形剤や高濃度カテキン飲料など、共同研究を通じた新たな用途開発への期待が寄せられた。

地域資源を活用した“売れる”商品作り
(株)アムコ 代表取締役 天野良英 氏
(地域ブランドアドバイザー・地域中小企業サポーター)

「涙の出ない甘い玉ねぎ」や神奈川県相模原市の名産桑の葉を利用した健康補助食品「さがみの桑茶」など、新しい発想で付加価値を高めた自社商品を次々開発する農業ベンチャー企業の代表。「さがみの桑茶」を地域特産品に育て上げた実績などから、地域中小企業サポーターや地域ブランドアドバイザーに就任。「地域特産品創出のプロ」として全国各地で講演会やコンサルティングを精力的に行っている。

天野良英氏

視点を変えて商品を見つめる

現在、地域が共通に抱える問題には、(1)どうしたら良いのかわからない、(2)誇れる素材がない、(3)お金がない、(4)アイディアがない、(5)変化を望まない等が挙げられる。地域資源の活かした“モノづくり”を成功させるためには、視点・観点を変えてみよう。商品は見方によって変わる。正面だけではなく、横や上下、斜めから眺めてみることも必要だ。

常に先を見続ける

売れる商品には、アイディア性が強い(特異性)、付加機能性が高い、時代のニーズにマッチ、希少価値や新規性、加工が楽で売りやすい、新市場開拓が可能、などの共通項がある。しかし、商品に「永遠」はない。とくに消費者の嗜好が多様化し、次々と目新しい商品が市場に出回る中、食品を例にとるとそのライフサイクルは、長くて3年と見てよい。発売後から「その後はどうする」と常にその先を見つめよう。

固定観念からの脱却を

どの業界にも独自の通念や慣習、価値観、しがらみがある。そこから固定観念が生まれ、「無理だ」「出来ない」とチャレンジする前に諦めることが多い。これでは新しい発想は生まれない。

異業種との交流や情報収集、自社の分析など刺激を受けることで、「やってみよう」「出来そうだ」と発想の転換が生まれる。一歩踏み出してみよう。

ビジネスはタイミングだ

当社が開発した「涙の出ない甘い玉ねぎ」は、多くのマスコミで取り上げられるなど話題を集めたが、収穫時期のズレや数量の確保難などから、ビジネスとしての成功は収められなかった。消費者が求めるときにモノがない、ではその商品は忘れられてしまう。いかにいい商品を生み出しても、タイミングを逸したら意味がない。タイミングを見極めよ。

失敗を開発に活かす

ボイセンベリーを活かした商品化も手がけたが、仕掛け方や時期、商品コンセプトを誤り一度失敗を経験。その経験を踏まえ、シーズの発掘から問題検討、権利保護、付加価値化の過程を経て、7年目での事業化=販売に踏み切った。失敗を次に活かせ。

地域ブランド作りの成功のポイント

いま地域に必要なものは、地域の盛り上がりや独自性、地域資源の見直しと再生、限定商品や企画などである。では地域のビジネスを成功させる条件は何か?それは、人材、予算、スピード、アイディア、販売などの経営要素をネットワークを利用し有機的に結びつけることにある。しかし、これに「やる気」という要素が加わらなければ成功はおぼつかない。