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クローズアップインタビュー

積み上げたノウハウと技術力で「新連携」事業の認定受ける

企業組合ヒーバックシステム
理事長 三宅龍二郎 氏

三宅龍二郎氏

「60歳からの人生をいかに過ごすか。ボランティアや趣味に生きるのもひとつの考え方。しかし、それでいいの?と自分自身に問いかけた」。

大手空調メーカーを定年前に退職しての独立・創業。52歳での決断だった。

「子どもも独立し、50を超えて年齢的にもいましかない、と踏ん切りをつけた。自信?全くありませんでしたよ」。

名古屋勤務時代、ツテも土地勘もない未知の地静岡で支店の立ち上げを任された。ゼロからの出発だ。豊富な知識と培った技術、そして誠実で的確な対応で次々と顧客を獲得。15年が経ち、静岡支店は、社内屈指の拠点に成長した。

当然、本社はこの人材を手放すまいと慰留する。しかし、その決意は揺るがなかった。

平成16年、静岡で築いた豊富な人脈の中から設備設計士、電気工事業者ら4人のエキスパートと企業組合を立ち上げた。

組合が手がけるのは工場、事務所、店舗などの冷熱設備の設計・施工・メンテナンス、さらにシステム全体の設計やコンサルティング。中でも、精密電子部品や医療機器の試験室など厳格な温度管理や精度を要求されるものが多い。

「例えば広さ650m2、高さが6mの工場。どの地点で計測しても室温23℃±0.5℃の範囲内でなければならない、という精度が求められる。0.5℃の範囲は、人が歩いただけで軽く上下する幅なんです。大企業では絶対受けませんよ。保証できませんから」。

これを可能にしたのは、技術力はいうまでもなく、長年積み重ねてきたノウハウがあってこそ、と力をこめる。

「大企業と規格品の競争をしても勝てないことは明らか。ユーザーの現場環境は全て異なる。我々は一社一社のニーズにあわせ、設備をカスタマイズし、提供する。これが技術力の向上とノウハウの蓄積につながっているのです」。

これらの技術を応用し、組合は自動車用電子部品の耐低温検査システムの開発に成功。6月に関東経済産業局から新連携事業の認定を受けた。企業組合では全国初の快挙だ。既に1セットは稼動し、自動車メーカーとの間で2セットの商談も進むなど幸先よいスタートを切った。

愛車を駆りふらりと旅に出る。「そこで触れる自然にとても安らぎを感じる」という。1℃、1ミクロンの正確さが要求される日常から解放される瞬間だ。