google

視点・指導員の現場から

行政サービスの担い手として期待集まる組合組織

簡易郵便局が復活した

7月14日、静岡新聞に「漁村の簡易郵便局 残った」の見出しで、南伊豆町妻良地区に簡易郵便局が復活した記事が掲載された。

大見出しは、『OBら「企業組合」』である。

記事はこんな内容である。郵政民営化と三位一体改革で経営が困難になった妻良地区の簡易郵便局は、一旦は町が受託したものの財政難で閉鎖してしまった。

高齢化の町では、簡易郵便局は身近な金融機関である。預貯金はもちろん年金受給もままならない。住民には深刻である。

その危機を「企業組合ポスト妻良」が救った。

郵便局に勤めていたOBが中心となり、簡易郵便局の業務を再開した。

企業組合は専門知識を持った個人が4人以上集まって、組合を設立し、事業を起こす。事業は営利事業であってもかまわない。その意味では、株式会社、有限会社と大差ない。

ただ違う点は、2つある。ひとつは出資者が業務に携わること、ふたつは会社で言う「資本金」(組合の出資金)が少額でもいい。ちなみに、ポスト妻良は100万円である。

わが街の観光スポット

島根県出雲市平田町に「市立木綿街道交流館」がある。平田は旧く木綿交易で栄えた町で、豪壮な旧宅が多い。交流館もそんな旧家を観光スポットに衣替えしたものであり、中にレストランもある。

その経営を任されているのが、「ひらた中高年まちづくり企業組合」である。組合員は、教師、役所のOB主婦などの29名である。

交流館は市の施設であり、指定管理者として企業組合が受託している。

組合員は勤務ローテーションを組み、それぞれ活き活きと接待や持ち前の個性で仕事をこなしている。

官から民の流れ

さて、現在、地域は様々な悩みを抱えている。特に行政は財政難で公の施設の維持に苦慮している。安く請け負い、且つ、サービスの質も落とさないなら、民間に施設管理を任せたいというのが本音である。

妻良や平田町にしろ、本来は行政サービスであったものを企業組合で引き受けたものである。

現在、行政サービスの担い手というと「NPO」が挙げられるが、全国の事例を見ても企業組合あるいは協同組合が活躍している例も多い。

時あたかも、団塊世代の大量退職時代。

優れたキャリアを活かした仕事に再びつきたい。それがさらに地域コミュニテ ィとの関わりを持てるものであるなら、なおのこと望ましいという人材は確実に多い。

その意味では、行政サービスをコミュニティ・ビジネスとして捉え、果敢にチャレンジする個人集団(組合組織)が増え続ける土壌はすでに出来上がっていると思われる。(杉山次)