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シリーズ「くみあい百景」

伝統的な技術と高い品質で
海外製品に対抗

天龍社織物工業協同組合

住所 〒437-1204 磐田市福田中島226番地の4
理事長 廣岡 啓二
組合員 150人
設立 昭和23年10月
TEL  0538-55-2121
FAX  0538-55-2132
URL  http://www.siz-sba.or.jp/tenryu

 

全国生産シェアの95%

まもなく60年の歴史を刻む組合。そのシンボルである組合会館。

旧磐田郡福田町(平成17年、合併で磐田市)。県西部に位置し、南は、白砂青松の遠州灘に面する。夏には、鮮やかな黄色の花を咲かせるハマボウが咲き乱れる。温室メロンの栽培でも有名である。

当組合は、この旧福田町の地を中心に、県西部地域の織物業者が、昭和23年に設立した県下有数の歴史と実績を兼ね備える協同組合である。

当地域での織物の歴史は古く、遠く江戸時代にまでさかのぼる。大和地方から雲斉織の技術を移入したのがはじまりとされ、遠州灘の港として帆船の出入りも多かったため、帆布の製織がさかんに行われるようになった。明治中期に入り、輸入コーデュロイを手本に、「コーデュロイ(コール天)」や「別珍」の製織技術を確立させ、わが国ではじめて製品化に成功した。現在、コーデュロイ・別珍の国内生産シェアは、95%以上を占める一大産地となった。

海外製品の流入で生産が圧迫

「ガチャマン景気などを経て、わが国繊維産業は大きく発展を遂げてきた。当組合もピーク時の昭和48年には、1600社の組合員を擁していた。以後、時代の流れとともに減少傾向が続き、現在は150社となった。組合員のうち3分の1がコーデュロイ・別珍を取扱い、それ以外は綿・麻・ウール等の天然繊維の生産に従事している。最近は、安価な輸入品におされ、組合員は皆厳しい経営環境に置かれている」。廣岡理事長は、繊維産業の低迷を危惧する。

当産地の特色であるコーデュロイ・別珍の製造工程は、「企画」「織布」「パイル(織物のうね)カット」「パイルの解毛・仕上げ」「染色仕上げ」など、幾つかの工程に分かれる。こうした技術は、歴史を積み重ね進化を遂げてきたものであり、他の産地や海外では真似できない伝統技法である。しかし昨年、コーデュロイの生産に欠かせない仕上げ加工業者が廃業し、1社を残すのみとなった。

「コーデュロイ・別珍は、製織後、特殊な加工技術を要する。こうした技術を継承していくことは何よりも大切なことである。しかし、海外製品の流入が増え仕事量が減少しているなかで、それを維持していくことは難しい面が多い」と理事長は、その課題を指摘する。

さらに現在、組合が直面している大きな問題として、サイジング事業がある。サイジングとは、糸を織りやすくするために行うのり付け工程のことをいう。

「昨年10月、別会社より事業譲渡する形で、組合の1部門としてサイジング事業をスタートさせた。製織を行う際、どうしても必要な工程であり、産地内生産を存続させる意味でも大事な事業である。組合員が減少し厳しい時であるが、組合員の理解と協力を得て事業の円滑な実施に向け、役職員は努力をしている」。理事長は、サイジング事業に取組む決意を力強く語る。

生き残りをかけて

産地の力を結集し、新しい事業に取組む廣岡啓二理事長。

昨年10月から、組合が運営しているサイジング事業部門。

 

海外、特に中国からの繊維製品の輸入増により、どの産地でも生産が圧迫されている。手をこまぬいているだけでなく、新たな展開が必要な時期にきている。

コーデュロイ・別珍は、冬物衣料というイメージが定着しており、1年を通して安定した商品として出回ることが必要である。

こうした課題を克服するために、組合員の一部と福田町商工会が中心となり、春夏にも対応できる“薄く”“軽く”“ソフト”なコーデュロイの開発に成功した。商工会では、中小企業庁のJAPANブランド育成支援事業を活用し、solbreveco(ソルブレベコ)というブランドを立上げ、販路開拓に取組んでいる。

「これからも海外から安い衣料がどんどん入ってくる。価格で勝負していたら、わが国の繊維産業は益々衰退していく。産地にしかできない伝統的な高い技術を駆使し、洗練されたデザインの製品づくりをしていくことが大切である。そういう意味で、これまでのコーデュロイのイメージを一新させた取組みには大きな期待を寄せている」。理事長は、産地の技術を結集した取組みの必要性を説く。

「繊維製品に限らず中国からの輸入は拡大しているが、食品に代表されるようにその品質には、数々の疑念が生じている。質の良い製品づくりで信頼を獲得していけば必ず活路は開ける。当組合には、有望な青年部もあり積極的に販路拡大に取組んでいる。まずは努力することである」。理事長は、産地復興にかける想いを熱く語った。