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シリーズ「くみあい百景」

“林業の匠”育成が組合の使命

協同組合ホクエンフォレスト

県内初林業サービス業者の組織化

旧天竜市を中心とする北遠地域は、面積の約9割を森林が占める。その森林は「天竜美林」と称され、吉野美林(奈良県)、尾鷲美林(三重県)とともに日本3大人工美林に数えられ、全国屈指の木材産地として栄えてきた。

しかし、高度経済成長の終焉を境に、木造住宅着工数の減少に伴う木材需要の低迷や外材の流入等による価格下落が長期的に進展。さらに作業者の高齢化や機械化の遅れなど問題が山積し、地域を支える基幹産業の地盤沈下が深刻化した。

平成7年、育林や素材生産、伐採など林業関連サービスに携る8社が結束。丸太の選別や搬出などの共同化による伐採・搬出作業の効率化や安全性の向上、福利厚生の充実を目的に当組合を立ち上げた。林業サービス業者による組織化は県内では初の試みだ。

事業の柱は林業サービスの共同受注で、組合員が伐採、枝払いした立木を土場に集め、丸太にする。その丸太を組合が選別、仕分けをし、製材所などへ運搬する。

従来、人の手で行われていた丸太の選別・仕分け作業を機械化するための選別機(ホイルローダー)や丸太を運搬するグラップル付きの大型トラックを導入し、あわせて機械保管庫も設置した。これらの導入には、林業就労環境改善整備事業を活用。国、県、市から補助金約3300万円を受けた。

「材木は長大な重量物で、伐採や選別、搬出には特殊な技術と大型の機械が必要です。しかし、小規模事業者ではその対応に限界があり、高齢化が進む作業者の負担も大きい。そこで、選別、仕分けなど個々での対応が難しい工程を共同化することで、作業者の負担を減らし、作業効率を向上させようと設立に踏み切りました。行政にもご理解を頂き、機械導入にあたっては、補助を受けることができました」。内山弘理事長は設立の経緯を語る。

丸太を運搬するグラップル付大型トラック。作業の効率化には欠かせない

林業就労環境改善整備事業を利用して設置した機械保管庫

「若者に山や木の魅力をもっと知ってもらい、多くの“林業の匠”を育てたい」内山理事長(右)、「技術や早さに加え、安全対策にも力を注ぐ」石野事務局長(左)

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防虫対策で新たなサービスを展開

平成16年度には、中小企業活路開拓調査・実現化事業に取り組んだ。同事業は、組合の新たな活路を見いだすため、新分野進出、新商品・新技術・新市場の開拓などの可能性について、調査研究や将来ビジョンの策定を通じ、成果の具現化を図ろうというもの。テーマは「害虫被害の実態把握と防虫策の研究」。丸太に巣食うカミキリムシなど害虫による被害は大きく、その対策が課題となっていたことから、県林業技術センターの助言・協力を受け、産官連携で防虫策の研究を行った。

「山で伐採した丸太は、製材されるまで、原木市場や製材所の土場にしばらく置かれるのが一般的で、この間に害虫が侵入することが多いんです。今回の調査で主に4種類の甲虫が確認されましたが、それぞれの生態にあわせ、その防虫対策も異なります。害虫の生態を十分に把握し、適切な防虫策を施すことで大きな効果を得られることがわかりました。この成果やノウハウをお客様である製材業者に対し、アドバイスすることでサービスに付加価値を生み、大きな強みとなっています」。設立以来、事務局を担う石野秀一事務局長は、事業の成果に自信をのぞかせる。

若者を受け入れる環境づくりを

さらなる技術向上にも意欲をみせる。林業作業の中でも、特に高度な技術が要求される伐木造材作業。その安全で確実な作業の習得と技術向上を目的に、毎年開催される静岡県伐木造材技術競技会では、県内各地から選抜された十数名の“林業の匠”が日ごろ培う技を競う。

「当組合からも選手が出場しました。伐木造材の競技大会は全国的にも珍しく、技術や早さだけではなく、安全対策も求められます。組合では、労働災害防止のための安全衛生講習会を毎年11月の、山の神を祭る“山の講”に合わせ開催し、さらに安全意識を高めるよう心がけています」と自らも山に入り伐木を行う石野事務局長は、力を込める。

今後、ますます作業者の高齢化と後継者不足が進むことが予想される。内山理事長は、組合の果たすべき役割をこう語る。

「プロセッサやフォワーダーなど最新機器を導入し、作業効率の向上や安全対策を万全にすることは言うまでもありませんが、私たちは山で育ち、山から糧を得ています。しかし、高齢化と後継者難が深刻化し、このままでは、業界から活気が失せてしまう。若者に山や木の魅力をもっと知ってほしい。そのためには、若者を受け入れる環境を整える必要があります。その役割を組合が担っていきたい。多くの“林業の匠”を育てたいのです」。

住所
〒431-3306 浜松市船明880
理事長
内山弘
組合員
5人
TEL
0539-26-1232
FAX
0539-26-2879