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富士の叫び

新政権に期待するもの

9月20日、安倍晋三氏が自民党総裁に選出された。初の戦後生まれの首相となった安倍氏は、「改革のたいまつをしっかり受け継いでいくことを宣言する」と決意を表した。

さかのぼること、5年と5ヶ月。大旋風をおこし自民党総裁選に勝利した小泉前首相は、従来の政治リーダー達とは異なる手法を駆使し様々な分野で”構造改革“を進めてきた。

金融不安を呼び起こした不良債権処理には大鉈を振るい、改革の本丸ともいえる郵政民営化法は昨年10月に成立。一般大衆にとってその言動は観劇でも楽しむがごとく、政治を身近に感じさせる一面もあった。また、徹頭徹尾反対派を排除した姿勢は新鮮な驚きを与え、ある種の小気味良ささえ覚えた。しかし一方で、優勝劣敗が鮮明化するなか格差社会が進展。企業や地域、所得、教育など各分野で格差は広がり、随所に暗い影を落とし始めた。さらにフリーターやニートが増加し、七・五・三と揶揄される若年層の定着率の悪さなど、新たなほころびが湧出している。

我々中小企業に対しても、ときに構造改革は経営に大きな転換を強いてきた。また、三位一体改革の名のもと、国が施策を定め予算措置をはかり地方と一緒に施策を進めるという予算構造は失われ、今後は、地方における中小企業施策の実効性や力量が問われることにもなる。

確かにヤル気ある中小企業、伸びゆく中小企業への振興施策は一定の成果を得た。しかし、一方で施策の利用もおぼつかず過度な企業間競争に追われ、疲弊していく中小企業がいかに多いことか。統計その他の数値を見る限り、景気は回復基調にあるが、その恩恵を中小企業全体が享受しているわけではないのは周知のとおりだ。

はたして新政権は、小泉政治と異なる独自の路線と政策に踏み出せるのか。全てはこれからである。ともあれ、中小企業が安心して経営に専念できる経営環境、地域とともに発展できる経済社会の整備にいっそう注力してほしいものである。

静岡県中小企業団体中央会・会長 井上 光一