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富士の叫び

尾崎咢堂のことばに思う

原油や原材料・食料などの物価急騰で景気回復ムードは一瞬にして吹き飛び、米国発の信じがたい規模の金融破綻劇で冷や水を浴びせられ、日本経済はショック状態に陥った。本会の調査でも、中小企業の景況は一気に悪化し5、6年前に逆戻りの状況である。

こうした中、われわれは先月、商工4団体、建設、運輸、農業の各団体と手を携え、静岡県知事に地方でできる限りの緊急対策をお願いした。

国においては、ようやく繰り出した総合経済対策の実行やいかん、いざ政治の出番だという期待をよそに大将がさじを投げたのだから、国民はあいた口がふさがらない。新内閣発足の余韻もどこへやら、議員諸氏は近く予定される総選挙に向けて臨戦態勢に入った。

中小企業と大企業との格差がかってないほど拡大する今、われわれは、取引条件をはじめとする不利の是正が強く求められていることを訴える一方で、弱肉強食社会によって地方の経済・社会・文化の崩壊が進むのではないかという危惧を抱いている。

この選挙では、中小企業が抱えるこれら課題の解決に向けて、真剣なまなざしで中小企業の声を聞き、政策に反映する政党、政治家をしっかりと見据えて選挙行動をすべきだ。

「憲政の神様」といわれ、帝国議会開設から連続当選25回、63年間にも及ぶ議員活動を通じ、常に民の側から声を放ち続けた尾崎行雄(咢堂)のことばを肝に銘じたい。

翁は言う。投票は自分の不利益になるような法律を作らせない代表者を選ぶためにするものである。自分の生命財産・権利自由を守る番人を選ぶことだと悟れば、頼まれたからではなく、むしろこちらから頼んで出てもらうべきものであり、選挙費用を持ち寄るぐらいでなければ、信用のおける番人は出てくれないことに気がつくだろう。この1票こそ最後唯一の自衛権である、と。

来月には米国大統領選も行われる。日本の中小企業、そして世界経済の行方を左右する重要なときが訪れた。

静岡県中小企業団体中央会・会長井上 光一