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視点・指導員の現場から

企業30年説というのが、あったけど…

発足は飛鳥時代?

テレビでご覧になった方も多いと思う。

「金剛組」。現存する世界最古の企業として紹介されていた。それも半端ではない。宮大工として法隆寺の建立(607年)に携わったというから、飛鳥時代から1400年の長きにわたることになる。同社のHPを見ると、その歴史が連綿として綴られている。

市場や技術の変動はあまりに速く、お馴染みの企業30年説から最近では10年説、7年説と次々と“衝撃”的なものまで出ている。一方で、「創業200年以上の国別の企業数について」と題したこんなデータもある。

ある研究機関での2007年度調査であるが、それによると世界では7800社ほど。興味深いのは、そのうち3100社が日本に存在するとしていることだ。他では、ドイツが800社、オランダ200社、国の歴史そのものが浅いアメリカには14社、中国9社、台湾7社、インド3社、そして、韓国はゼロ。

日本では、旅館・料亭・酒造・和菓子などが4割近く占めるものの、さらに100年以上となると、1万社を超えるという。

これは(1)島国で侵略を受けていない(2)継続を美徳とする風習などに加え、(3)本業重視の姿勢(4)家訓があり投機的なことを戒めているなど、いわば企業のDNAを存続させようとする精神が強いといった理由があるようだ。

根拠の薄い30年説

いつの間に、定説のようにさえなってしまった「会社の寿命30年説」も日経ビジネスが83年に総資産額のランキング分析を基に「企業にも寿命があり、優良企業とはやされても盛りは30年まで」と結論付けたのが、一人歩きしたものらしく、存続期間の統計上の結果とは別だという。

もっとも、創業期→成長期→成熟期→衰退期という企業のライフサイクルや30代で起業した社長も60代になるといった経営者の年齢を考えれば、納得してしまいがちな数字ではある。

引き継ぎたい中小企業スピリッツ

最近は総会に出席しても、創立40年、50年という組合に出会うことが多くなった。同時に、「設立当初と比べると組合員数は半減し、会費収入も激減し…」と苦境を訴える声も耳にする。

時代の要請により、様々な形の組合や企業が生まれ、その一部は消えていった。が、培ってきた技術やそれぞれの企業精神を受け継ぎながら、その上に変革を重ね、40年・50年と長く戦い続けている企業も多く、その姿に勇気付けられることがある。

近年の法改正を見ると、貸借対照表などの目に見える数字の論理に押されていることが多い。重要な“人財”や企業・組合の精神はそこに表れることはなく、評価の外に押しやられがちだ。

事業承継税制の改正やM&Aなど会社存続の手法は、徐々に整いつつある。30年説の呪縛から離れ、「中小企業スピリッツ」は永遠に伝えていきたいものだ。

それには、厳しい経済・社会の変動の中で、果てしない自己変革への挑戦が求められてはいくが…(古)