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クローズアップインタビュー

産業振興功労知事表彰を受賞
「名調整役」として業界をまとめる溶接技術・技能者育成にも手腕を発揮

静岡県溶接工業協同組合
小楠裕通 副理事長

2月7日に開催された中央会表彰式典で産業振興功労知事表彰を受けた。

「思いもよらぬ受賞。多くの方に支えられてきたことにあらためて感謝したい」。

平成6年に県内560社の溶接業者が組織した県溶接工業協同組合の副理事長を創立から務める。「梶本理事長の強力なリーダーシップがあったからこそ法人化できた。偉大な理事長の下にいるから楽だよ」というが、準備にあたっては、県内各地の溶接協会を奔走するなど、とりまとめ役を買って出た。

製造業から建設業まで広範にわたる業者の一本化という難事をスムースに成し遂げた陰には、「縁の下の力持ち」、「調整役」の存在が大きい。

組合では溶接技術の向上を事業の柱に据え、溶接技能者評価試験や溶接技術競技大会などを活発に展開。副理事長職とともに、検定業務委員長や東海四県を管轄する日本溶接協会中部地区の支部委員会に組合代表として参画するなど重責を担った。

「団塊世代の大量退職などで、今、技術の伝承が岐路に立っている。ものづくりの楽しさや重要さを次の世代に伝えることが、この業界で生きてきた私なりの恩返し」と強い信念をもち、熱心に後進の指導にあたる。

県立浜松技術専門校の前身である浜松機械工養成所の溶接科を修め、15年間、溶接工として腕を磨いた。30代半ばで株式会社小楠熔接製作所を創業。溶接業界に身を置き、55年のときを刻む。

半世紀を優に超える月日の中で忘れ得ないのが、平成16年、浜松で開催された「全国溶接技術競技会」だ。大手企業ではなく、組合が中心となり運営した初の大会として注目を浴びた。その実行副委員長として大会を成功に導いた。

「開催地の調査から始まり、会場の選定、会場設営、当日の運営、500名を超える関係者の宿泊先や会場までの交通手段の手配、行政や関係機関との折衝など、組合がひとつになって成功させた意義深い大会だった」と振り返る。

浜松がまつり一色に染まる5月。その「浜松まつり」では、町の総責任者である組長を長く務め、現在は顧問に就く。

「まつりには喧嘩がつきもの(笑)。もめごとをうまく収めるのが責任者の仕事だよ」とここでも名調整役ぶりを発揮する。

趣味は熱帯魚の飼育と盆栽。

「細かな枝を剪定したり、折り曲げたりして、手間と時間をかけ、ひとつの作品をつくりあげる盆栽と、ものづくりは共通してるね」。