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シリーズ「くみあい百景」

組合活動と社会的使命
規制緩和に対応

藤枝自動車整備協同組合

住所:〒426-0026
藤枝市岡出山1-16-10
理事長:田森淳夫
組合員:104人
設立:昭和35年12月
TEL:054-641-0889

 

自動車整備業界で県内初の組合

組合の活動拠点である組合事務所。

自動車産業は、製造・販売をはじめ、整備・資材など各分野にわたる広範な関連産業をもつ、わが国を代表する基幹産業のひとつである。日本自動車工業会の推計では、自動車関連産業で働く人は、約495万人、全就業人口の約8%を占めている。

当組合は、こうした自動車産業のなかで、自動車修理業、板金業、塗装業、シート内張り業など、自動車整備を行う藤枝市及び志太郡の事業者31名で、昭和35年に設立された。自動車整備業としては、静岡県内で初めての組合設立である。

「組合を設立した昭和30年代は、まだオート三輪車が隆盛を極めていた頃である。こうした時期に、親睦組織を発展させ法人化したことは、本当に先見の明があった。東奔西走し、組合設立に向け尽力してきた諸先輩方には、頭が下がる思いである。現在、組合員数は100人を超えるまでになり、組合活動を中心に業界を取り巻く様々な問題に対応している」。田森理事長は、組合設立で業界が結束した意義を強く語る。

組合活動と社会的使命

組合は設立以来、資材の共同購入事業や教育研修事業の実施を通じて、組合員の経営安定に努めるとともに、組合員やその従業員のための視察旅行やスポーツ大会を開催し、業界の団結を図ってきた。昭和44年には、活動拠点となる組合事務所を藤枝市内に取得するなど、順調に発展してきた。

こうしたなか、わが国の自動車産業も、日本経済の高度成長と生活水準の向上により、著しく発展を遂げてきた。その反面で、交通事故の激増や排気ガスなどの環境問題など、多くの社会的問題を引き起こしてきた。

組合は設立後まもなく、自動車の運転技術の伝授を目的とした、(有)藤枝自動車教習所を設立し、組合員が交代で運転技術の指導に当たった。

「組合は設立当初より、業界の振興・発展だけでなく、交通事故や公害のない社会の実現を目指すことも、組合に与えられた社会的使命のひとつであると考えていた。自動車教習所の運営もその一環であり、藤枝市の要請を受け、青少年の運転免許取得に向けたサポートも行った。現在でも、警察、陸運事務所と連携し、毎年定期的に、街頭での車両点検整備の指導にあたっている」と理事長は、組合の行う社会的活動を説く。

法改正で立場が逆転

「安全・安心のための整備を強く訴えたい」と語る田森理事長。

平成7年7月、自動車技術の進歩やユーザーの負担軽減などを理由に、道路運送車両法の一部が改正された。

この法改正は、自動車整備業界にとって、大きな変革を促すほどの大きな問題であった。

主な改正内容は、(1)定期点検整備の実施時期は、検査の前後を問わない。(2)自家用自動車の6カ月点検の義務付け廃止と定期点検項目の簡素化。(3)車齢が11年を超える自家用自動車の車検の有効期間を1年から2年に延長、などである。それ以降も、次々に規制緩和が繰り返されてきた。

この法改正により、これまで“車検の前”に必ず行われていた整備が、“車検の後”で行うことも可能になった。その結果、車検が通れば整備を行わないケースも起こるようになってきた。

「今までは、待っていても車検の度に整備の仕事があった。しかし、法改正により車検と整備が切り離され、車検が通れば整備(部品交換など)をやるか否かの判断は、ユーザーの判断に委ねられた。言い換えれば、整備に対する主導権が全面的にユーザー側に移ったことになった。法改正により、ユーザー車検が増加。定期点検の義務付け廃止による需要の減少等もあり、我々は、これまでにない経営に対する意識改革の必要性を迫られるようになった」。理事長は、法改正の影響を嘆く。

整備の必要性を訴えたい

毎年、定期的に開催している研修会の様子。

このように、現在の自動車整備業界は、国内自動車販売台数が伸び悩むなか、規制緩和が進み、ユーザーニーズも多様化してきている。さらに人口減少社会も進行し、ますます厳しい経営環境が続くものと予想される。

「規制緩和により、自動車ユーザーの自己管理責任が強く求められるようになった。車検のためだけでなく、安全・安心のためにも点検・整備が重要なことを、強く訴えていきたい。それが、組合の社会的使命であり、そうしたPR活動を通じて、自動車整備業界の新しい活路を切り拓いていきたいと考えている」。理事長は、環境変化に対応する想いを熱く語った。