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富士の叫び

実態に即した事業承継制度の拡充を

企業経営に大きな影を落としている事業承継問題は、経営者の高齢化が進む中、ますます深刻さを増している。

中小企業白書では、生産効率が劣っていないにも拘らず、廃業を余儀なくされる企業が毎年7万社に上り、その第一の要因に後継者不足を挙げていることを懸念している。昨今、M&A等の選択肢も開かれるなど、幅広い対応も可能となってはいるが、それはごく一部にとどまり、大方の中小企業、殊に中規模以下の企業・個人事業所では、身内に承継されることが一般的である。

中小企業は同族的色彩が強く、その株式は大企業の公開株式のような市場性は全くなく、流動性も低ければ、換価性にも乏しい。したがって現行の生前贈与の仕組みや相続税の適用は、永続性を基本理念とする事業経営とはかけ離れており、事業承継の大きな足枷となっているのが現実である。

こうした中で朗報があった。平成17年度から中小企業基盤整備機構に設置され検討が進められてきた「事業承継税制検討会」、「相続関連事業承継法制等検討委員会」の中間報告がなされ、大筋として事業承継税制の見直しと、事業承継契約(仮称)スキームの創設等を含む新規立法が提言されるとともに、この6月から中小機構9支部に『事業承継コーディネーター』が設置され、具体的な取り組みが始まったことだ。

本会では、既に26年前の県大会でこの問題を取り上げ、粘り強く運動を続けてきたところだが、ここにきてその成果が上がりつつあるといえよう。

すでに包括的な相続税の減税措置の導入が進む欧州各国や2010年までに相続税廃止の動きをみせる米国など、欧米先進国ではわが国に先んじて事業承継対策に取り組んでいる。

グローバル化が進む今こそ、わが国経済を下支えする中小企業の基盤強化を図るため、実態に即した事業承継制度の拡充を強く訴えていきたい。

静岡県中小企業団体中央会・会長 井上 光一