次代を担う若手が組合を設立
昭和29年、浜松市内の酒販店の若手経営者や後継者が集まり、商品や経営の研究、商人意識の涵養、さらには人間形成の場として、浜松青年酒販店経営研究会「末広会」を発足させた。
16年後の同45年、共同購入や金融事業など経済事業の実施を目的に法人化を果たし、通算半世紀を超える歴史を重ね、こんにちを迎えている。
この間、当業界を取り巻く環境は、ディスカウンターや量販店による価格破壊の進展、酒類販売の実質自由化、これに伴う異業種や異業態からの参入など激変。転廃業を余儀なくされる店舗が後を絶たないなど厳しい状況にある。
大好評 こだわりの組合ブランド酒
危機感を募らせた組合が打った一手は、業界で「手印」と呼ばれるプライベートブランドの開発だ。
その第1号として、平成5年、地元の蔵元に製造を依頼した本格純米酒「曳馬の詩(ひくまのうた)」を販売。
続く同7年には、10日間にわたって組合員が交代で蔵に入り込み、杜氏の指導のもと仕込んだ「曳馬の詩・白生酒」の商品化に成功。爽快なのどごしとワインに似たフルーティな香りが特長のにごり酒に仕上がった。洗米から組合員が手がけた自信作だ。
「厳しい時代にこそ、結束は必要。共同意識を高めるため、組合ブランドの清酒の開発を手がけました。商品の知識はあるが、酒造りは初めて。試行錯誤の連続でした」。加藤正道理事長は、述懐する。
組合はその後も本醸造酒を発売するなど、同シリーズはいまや浜松を代表する地酒に成長した。
この集大成が平成15年に誕生した新ブランドに結実する。その名も「浜松」。原材料から組合が厳選し、杜氏と膝を突き合わせ納得いくまで話し合いをもつなど、随所につくり手のこだわりが感じる地酒で、限定150本の純米吟醸や生原酒はたちまち完売するほど好評を得た。
極めつけが「大吟醸斗瓶囲い」だ。低温で長期間発酵させたもろみを袋でつるし、自然に滴り落ちるしずくを斗瓶に集めた、まさにこだわりの逸品。舌の肥えた清酒ファンを中心に強い支持を受ける。
「曳馬の詩」、「浜松」はともに、組合員25店舗のみの限定販売。これを目当てに足を運ぶ客も多く、酒販店の販売促進に大きな力を発揮する。
「最近のお客様はよく勉強されています。これに対応するためには、それ以上の商品知識が求められる。これからは、一人ひとりの嗜好に合わせ、商品を提案するコンサルティングセールスが中小酒販店の生き残る道。そのためには、酒造りの知識も欠かせません。組合では隔月で欠かさず研修会を開き、清酒をはじめ焼酎やワインのテイスティング、杜氏や酒造メーカーの技術者を講師に酒造りの研修を行うなど、研鑽を重ねています」と理事長は積み重ねた研究の成果に自信をもつ。 |
夏と冬、組合が発行する販促用パンフレット。宣伝に大いに貢献する。
「今後も、組合員をサポートする事業を次々に仕掛けます」加藤正道理事長
昨年10月、初の消費者向け試飲会を開催。組合お薦めの酒がズラリ並ぶ。 |