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富士の叫び

「共生」「地域貢献」で可能性増す相互扶助の精神

“いざなぎ超え”の好景気も手伝ってか、新年の挨拶を交わす人々の顔には久しぶりにほころびが見られた。とはいえ、多くのリーダーが不透明な時代への不安を隠せずにいるのも確かである。

今年、統一地方選挙や参議院選挙を控える政治家は、有権者の顔がいっそう見えにくくなったとぼやき、行政マンは急激におし進められた改革の着地点を懸命に模索。経営者はといえば、かつての回復期と違って実感や業界全体の浮揚感がないと首をかしげる。さらに、一見平穏な裏で迎えつつある百年単位ともいえる国内外の転換点が、不透明感をいっそう強めている。

ひとつが、日本の少子高齢問題だ。政府系機関による最近の調査では、15歳から64歳の生産年齢人口は、今後10年で実に770万人が減少するという。単純に静岡県にあてはめると20数万人の減少で、企業にとって人材確保の遅れはもはや命取りになりかねない状況といえる。また、地域社会では高齢化に拍車がかかり、早晩、従来のコミュニティーを維持すること自体が難しくなる局面を迎えるのではないか。

国外では、BRICSをはじめとする新興国の台頭である。いずれ経済規模は先進7か国合計を抜くとみられるが、グローバル化・国際分業の波は激しさを増し中小企業に押し寄せるだろう。

こうした転換期のさなかに、競争原理と闘争による一人勝ちの経済環境に委ねてしまう社会でよいのか、という疑問を抱かざるを得ない。

今、あるリーダーは「共生」の意義をあらためて業界に問いかけている。学問的にも、生態系の基本は競争関係より「共生」が普遍的であるとされ、これは協同組合の相互扶助精神に通じるものである。また、地方行政が「民」の力を求め“小さな政府”へと方向転換を図るなか、相互扶助を掲げる協同組合が、政官財や市民を結びながら地域づくりに貢献できるビジネス・協働の場を展開する可能性も増している。

協同組合への期待は、いついかなる時代にあっても涸れることはない。組合リーダーは無限の可能性を信じ、その任にあたってほしい。

静岡県中小企業団体中央会・会長 井上 光一