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視点・指導員の現場から

高年齢者の雇用確保
義務化への対応

改正高年齢者雇用安定法

本年4月1日から、改正高年齢者雇用安定法(以下「改正法」)に基づき、全ての企業に対し65歳までの雇用確保が義務付けられた。

従業員規模300人以上の企業では、この改正法にほとんどの企業が対応しているが、中小企業においてはこれから対応しようとする、あるいは対応しなければならない企業が多いのが実態である。

対応できていない理由に、「65歳まで定年延長することはできない」「高年齢者を雇用していないから当面のうちは関係ない」「就業規則には記載していないが、実際に継続雇用しているから問題ない」といった改正法改正高年齢者雇用安定法に対する”誤解“が多い。

確かに、今回の改正法は複雑で企業側に委ねる面が強いため、”誤解“しやすいが、義務化された以上、対応しないわけにはいかない。

未対応企業の弊害

今回の改正法の内容を見ると義務化に対応しなかったことを理由に課せられる罰則はない。しかし、思わぬところで制限を掛けられてしまうことがある。

それは、ハローワークである。改正法の義務化に対応していない企業の求人申込書を受理する際、現在のところ、対応できていない理由及び今後の対応予定等を説明が必要となるが、その内容によっては受理されないケースもあるという。今後、受理の基準が厳しくなることも想定される。

また、企業で定年退職による離職者が発生し、その者が失業保険給付申請を行う際、離職理由欄に会社都合による解雇として扱われる可能性がある。それを理由に、特定求職者雇用開発助成金又は試行雇用(トライアル)奨励金の受給ができなくなる。その他にも企業にとって不利益又はトラブルが想定される。

2007年問題

しかし、改正法に対応していない企業が最も不利な立場になると考えられるのが、企業のイメージダウンである。

超高齢社会の突入により、県内においても5人に1人が65歳以上で占めるようになり、今後も高齢化率が高まる傾向にある。

そのような中、大企業を中心に若年者を中心に求人数が増加しているが、その一方で中小企業における若年者の求人採用が難しくなっている。また、来年から主に大企業から団塊世代の大量退職が始まるが、中小企業にとっては高度な技術、知識又はノウハウを有する有能な人材を獲得する絶好のチャンスでもある。

改正法に関して経営者として納得できない背景もあるかと思うが、各社とも若年者、高齢者に限らず有能な人材を獲得するために必死となっており、企業間の競争が激しくなる中、有能な求職者は義務化された法律に対応していない企業を見て、どのように感じるのであろうか。コンプライアンスの遵守は、今や大企業だけの課題ではない。

なお、改正高年齢者雇用安定法については、中小企業静岡昨年8月号(No621)又は65歳継続雇用ガイドWEB ( http://www.siz-sba.or.jp/65koyou/)をご覧下さい。(永井)