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特集

2006白書にみる中小企業の経営事情
事業・技能承継と若年者雇用への取組み

高齢化した人口構造の中で、中小企業が抱える問題は少なくない。

2006年版中小企業白書では、「少子高齢化・人口減少社会における中小企業」をテーマに、昨今、中小企業が直面する経営課題を分析。円滑な事業承継やM&A、技能承継、若年者の雇用・定着率向上に向けた中小企業の取り組みなどを掲載している。特集では、その概要を紹介する。

事業承継と事業売却

1 事業承継の課題

「承継アンケート」では95.1%の経営者が、自分の代で廃業するのではなく「何らかの形で引き継ぎたい」と望んでいる。
そのうち、(1)後継者を既に決めている企業は44.0% (2)後継者を決めてはいないが、候補者がいる企業は37.1% (3)後継者の適当な候補者もいない企業が18.9%、となっている。

以下、この3つのケースごとに、事業承継を望む企業のそれぞれの課題を検証する。

(1)現時点で後継者を決めている企業

前掲のとおり、事業の引継ぎを希望している企業の中で、後継者を「既に決めている」企業の割合は44.0%である。具体的な後継者としては、自分の子息や子女が71.3%であり、その他の親族、娘婿、兄弟姉妹、配偶者も合わせると親族の候補者が83.9%を占める。


図1によれば後継者が決定している企業の決定理由は、「役員・従業員の理解を得ることが可能」とする企業が57.9%を占め、それに「事業を成長させることが可能」とする企業の割合が42.3%と続き、「他に適当な人材がいない」とする11.9%を大きく上回っている。これらの理由と後継者の71.3%が子息や子女であることを併せて考えると、単に自分の子供だからというだけでなく、 (ア)中小企業では親族の方が会社内の理解を得やすい (イ)親として自分が企業経営の帝王学を目の前で見せてきたことに対する期待がある、等の理由も考えることができるだろう。

では、実際の代表者交代に向け、経営者は具体的にはどのような準備を行っているのだろうか。次に、具体的に着手する事業承継の準備項目として、(a)企業経営 (b)後継者教育 (c)経営環境 (d)相続対策という4つの点に着目したい(図2)。

ここから、後継者を事前に自社勤務させることや、経営に必要な知識を取得させること、ステークホルダーの理解を得ることなど、後継者教育や周囲の理解を得る努力は大多数の企業が一定程度行っていることが分かる。ただし、相続対策準備は比較的劣後扱いとなっているほか、「準備すべきか検討したことがない」、「準備する必要を感じない」と回答する企業が多いことが分かる。事業承継に関する会社の財務整理や税務面などの相談は、経営者側から日常業務の中では現実的な問題として認識しづらいことや、後継者側からも、相続等の話は親が健在の間に兄弟親族間で持ち出しづらい、といった現状を反映しているのであろう。

事業承継の問題は、法律、税務など様々な知識が必要なため、経営者独自で解決するのは難しい。そこで専門家の助言が求められるが、中小企業経営者にとって身近な相談相手とはどのような相手を指すのだろうか。最も多いのは税理士の31.6%であり、公認会計士の8.8%と合わせるとおよそ4割を占めている。従来から中小企業の事業承継といえば相続税問題のイメージが強いことも一因だろう。