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富士の叫び

地域の視点で事業の新展開を

景気回復は、11月に「いざなぎ超え」を果たし戦後最長になろうとしているが、この間、社会病理現象ともいえる暗部が各所に目立つようになってきた。犯罪発生率の増加や交通事故死の5倍に迫る3万人超の自殺者数などが象徴的で、不況や構造変化のもと、所得格差など新たな階層化が進み地域社会が不安定化したことがその背景として指摘されている。

一方、日本的経営の良い面が再評価され、地域社会の重要性とそれを支える地域産業の役割の大きさに留意したいくつかの動きが政策的に出始めたことに注目したい。

そのひとつは、地域の食材や人材、技術を結びつけ、新たな商品・ブランドづくりをめざす「食品産業クラスター推進事業」の動きである。農業と中小企業などの連携により、相互の競争力強化や食品産業の活性化を図ろうというもので、農林水産省・県がすすめるこの事業の事務局を中央会内の県食品産業協議会が担当することも決まった。業種を超えた相乗効果が期待できるだけに、食品産業はじめ多くの中小企業の参加を期待しているところである。

経済産業省では、来年度の目玉事業として、「地域資源活用企業化プログラム」を企画している。埋もれている地域資源を掘り起こし、市場ニーズに合った新商品・新サービスとして企業化することが重要であるとし、地場産品や技術、伝統文化など独自の資源を活用した新製品・新サービスの開発・販売に取り組む中小企業を支援する内容が盛り込まれるという。

また今年4月には、地域ブランドを保護する「地域団体商標制度」がスタートした。これにより、例えば”静岡茶“など地名入り商標を出願できるのは事業協同組合等に限定されることとなった。

こうした新展開は、地域における中小企業や協同組合が果たす役割の重要性が再認識されている証である。国・県の新たな動きに呼応して、地域行政による支援施策がいっそう充実されることを望むとともに、そこに根付く中小企業の奮起と果敢な挑戦を強く期待するものである。

静岡県中小企業団体中央会・会長 井上 光一