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犯罪から身を守る地域社会の実現を

 日本の治安は、今まさに危険な状況にある。増加する刑法犯、頻発する来日外国人による犯罪や少年犯罪。のみならず、テロ活動など目に見えない脅威も確実に高まっている。こうした情勢悪化は、世界で有数な安全国家といわれたわが国の姿を、大きく変貌させつつある。
 犯罪の増加は、社会の変化やそれに伴う意識の低下などが大きく影響している。例えば、景気低迷や産業構造の変化は、企業倒産や失業者の増加を招き、漠然とした不安感と心理的荒廃を生み出した。一方、地域では連帯感の希薄化、社会倫理や法遵守への意識低下などを起因とし、地域社会に内在する犯罪抑止機能が劣化してきたことなど見落とせない現実はあまりにも大きすぎる。
 かつて、安全は日常生活の中であたり前とされていた時代は遥か遠くに過ぎ去ってしまったが、国民が心から安心して暮らせる社会環境を取り戻すことが、今日の重要な基本テーマとなった。
 そのためには、行政並びに警察当局の不断の取り組みは勿論であるが、市民や地域の企業が一丸となり、まさに全県民をあげて犯罪のないまちづくりをめざすことが必要である。本県においては先頃、県防犯まちづくり県民会議が発足し、防犯まちづくり条例の制定や防犯まちづくり行動計画の策定など、次々と各種指針が示された。行政や警察、地域、職場が緊密なネットワーク化をはかり、様々な視点と多様な手法で治安回復への方針を具体的に打ち出したのは、高く評価される。
 もちろん、企業によせられる期待も大きい。日頃から職場防犯に万全を期することはもちろんのこと、企業の社会的責任を果たす上で、自治会や学校など地域と一体となった防犯活動の展開が不可欠との強い自覚が求められている。
 いずれにせよ、自らの安全は自らで守る「自助」の精神と、市民・企業・地域が連携して取り組む「互助」の精神を継続的に発揮していくことが、安全なまちづくりの第一歩となることを各々が肝に銘じなければならない。

静岡県中小企業団体中央会・会長



中小企業静岡(2005年8月号No.621)