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中小企業重視への抜本的政策転換を望む

 新年の諸行事も一段落するこの時期、私は各界の経営者から寄せられる一年の計、すなわち、その年の企業テーゼにゆっくりと目を通すことにしている。 
 そこで今年は、ちょっとした異変を感じた。それは、従前多く見られた「がんばろう」「世界に追いつけ追い越せ」といった啓発・革新に向けた呼びかけ型が影を潜め、「こうあらねば」「こうしていく」などの具体的戦略や戦術に言及するものが数多く見られた点である。
 この変化は何を意味するのか。それは、もはや政府の施策や支援は無理だと判断し、自力再生に立ち上がった経営者の心の内を投影したもの、と私はみる。
 すなわち ― 日本経済はようやく回復の兆しが見られるものの、その恩恵は一部の業界や大企業にとどまり、中小企業の多くは相変わらず弱い立場にある。加えて、その存在を脅かす外圧が矢のごとく迫る中で、スピード感なく実効に乏しい経済政策のもとでは、現場で解を出し、現場で決断、行動に移していくしかない。さもなければ、没してしまう ― そうした経営者の強い覚悟が込められていると思えてならない。
 しかしながら、わが国の経済は歴史的な構造変化の真っ只中にある。全ての中小企業が自助努力のみでこの流れに処するには、あまりに厳しくハードルは高い。
 例えば産業の空洞化がそうだ。以前にも記したが、十年前に五百兆円であったGDPは今も五百兆円のままであるのに対し、日本企業の海外生産高は、その間、百兆円からいっきに二百兆円へと倍増した。今もなお工場の国外シフトは続いており、早急に規制緩和による新産業創出など総合的な対策が求められている。
 今後、経済再生の先導役である中小企業の活力を十分に引き出すためにも、産業政策の比重を中小企業重視へと抜本的に転換することを強く望むものである。

静岡県中小企業団体中央会・会長



中小企業静岡(2005年2月号No.615)