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・・・商店街活動
「小売業の本来的機能と付随的機能」
 便利で快適な買物環境を創出するための“共同化”
野口冬樹事務所
中小企業診断士 野 口 冬 樹


高度化資金を活用した共同店舗が静岡県で誕生したのが、昭和三七年。 
 その後四〇年代に入って、全国でも大型共同店舗の設置が見られたものの相次いで挫折した。
 そのひとつの要因に、当時は高度化資金を使った共同店舗には、核店舗となる大型店との共同出店は制度上認められなかったことがあげられる。
 こうしたことの反省を踏まえ、大型店を核店舗とした共同店舗も制度的に認められ、大型店との相乗効果を図りながら共存共栄しているものが現在では存立している。
 共同店舗といっても、次にあげるように、いくつかのパターンがある。
 1.ショッピングセンター型
 2.スーパーマーケット型
 3.市場型
 4.デパート型
 5.寄合専門店ビル型
 静岡県におけるケースのほとんどは、ショッピングセンター型若しくはスーパーマーケット型である。
 ところで小売業の機能には、「本来的機能」と「付随的機能」とがある。
 本来的機能とは、消費者に商品やサービスを適正な価格で提供すること、すなわちマーチャンダイジング機能で、これを発揮することが小売業の最も基本的な役割である。
 しかしながら、小売業はこの機能のみを強化・充実すれば万全かというと決してそうではない。
 小売業の本来的機能というのは、小売業が小売業として成り立つ、当然かつ本来的条件であって、必要条件になり得ても十分条件にはなり得ない。
 現在のような成熟した社会・消費者ニーズの個性化・多様化の進展という中で、小売店としては、本来的機能に加えて、付随的機能も充実・強化することが求められている。
 付随的機能を具体的にあげると、
A豊富な商品の中から自由な商品選択ができること
Bワンストップショッピングができること
C快適な買物環境が提供できること
D生活向上のための情報が提供できること
E駐車場等の利便施設があること、
などがあげられる。
 これらの付随的機能の必要性は認めるものの、その充実には多額の資金を必要とし、商業者が単独で充足することは困難なことが多い。
 しかし、小売業として繁栄していくには、どうしてもこの機能は高めなければならない。
 ここに「共同化」の必要がある。
 このような視点からいえば、共同店舗とは小売業としての「本来的機能の充実に努めている小売業者」が共同して、小売業としての本来的機能を一層充実しながら、更に付随的機能をも適合して発展を図るものである。
 ここで重要なのは、単に小売業者が共同するということでなく、「本来的機能の充実に努めている小売業者」、つまり意欲的な小売業者の集まりでなければならないということである。
 逆に個店単独若しくは商店街で、共同でこれらの機能を構築できれば必ずしも共同店舗でなくても企業の繁栄は可能であるということも考える必要があろう。

中小企業静岡(1997年11月号 No.528)