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袋井市建設残土再生事業協同組合
▲組合で運営する建設残土再生プラント

徹底した品質管理で稼働率の向上を

今年五月にプラントを完成

 近年、リサイクルへの関心が高まる中、建設業界において、建設残土のリサイクルプラントを導入する動きが各地で見られる。
 こうした中で、協同組合による建設残土リサイクルプラントを完成したのが、今回ご紹介する袋井市建設残土再生事業協同組合である。
 建設残土とは、工事のために地面を掘削した際に発生する土である。本来はそのままもとの場所に埋め戻すのが望ましいが、掘削した土には小石や砂、粘土等がバラバラに含まれるため、そのまま埋め戻しても十分な締め固めができず、地盤沈下の原因となる。そのため、大半は建設業者が各自で保有する処分地で廃棄処分してきた。
 しかし最近は処分地の確保が難しく、建設業者にとっては処分コストの上昇による負担が大きくなる一方で、不法投棄による環境破壊が社会問題となっている。
 こうした状況から、袋井市内の水道工事業者や建設業者の中で五年前から建設残土再生プラントの建設計画が浮上。昨年八月に三八社で組合を設立し、袋井市の協力を得ながら計画を進め、今年五月にプラントを完成させた。

粘土質の土に最適の再生処理
▲生石灰を貯蔵するタンク


 組合が行う建設残土のリサイクル方法は、残土に生石灰系の固化材を加えて改良土に再生加工するもの。生石灰によって土中の水分を低下させるため、軟弱地盤を改善する効果も高い。
 「袋井市で発生する残土は粘土質のものが多いため、この方法がもっともいいんです。生石灰は人体に無害ですから環境面でも問題ありません」(原田専務理事)
 導入にあたっては県内外のプラントを視察し、何度も実験を行いながら最適のリサイクル方法を研究したという。
 計画を進める中でもっとも苦労したのは土地の選定。
 「地域住民に迷惑がかかる場所では困るが、地盤が弱かったり交通の便が悪い所でも困る。できるだけいい場所を探して三〇カ所以上の土地に当たりました」(同)
 その結果、東名袋井ICから車で五分。市役所まで十五分という交通アクセスに恵まれた場所にプラントを建設することができた。
 全国的にこのようなプラント建設の動きは見られるものの、さまざまな障害により計画が進まないケースが多い。この組合が比較的スムーズに完成できたのは、袋井市の協力があったからだといえる。
 「組合として事業を進めてきたのが良かったと思います。個々の企業で進めるのに比べて信用も得やすく、各方面からご協力がいただけました」(同)
 現在、組合で処理した改良土は、袋井市の上下水道の工事などに利用されている。

稼働率の向上に向けて
 組合にとって今後の課題はプラントの稼働率向上。改良土の需要を開拓し、残土の再生処理量を拡大することで、コストを下げることが求められている。
 「現在は上下水道工事での利用がほとんどですが、道路工事や民間工事などにも利用範囲を広げていきたいと考えています」(同)
 そのためには改良土の品質管理も重要なポイント。組合ではプラント内に検査を行う設備を設けるとともに、再生処理工程を改善するための研究を続けるなど、品質向上に努めている。
 「残土が発生する場所によって材料となる土の性質は違いますが、改良土の質は均一でなければならない。幅広く改良土を利用していただくためには品質管理が欠かせません」(同)
 こうした組合の努力もあって、組合で再生した改良土は、利用者から高い評価を受けているだけでなく、各地の建設業者や団体から問い合わせを受けるなど、県内のモデルケースとして注目を集めている。
 今後実績を積み上げていく中で、建設残土のリサイクル促進に貢献していくことが期待されるところである。

 

中小企業静岡(1997年11月号 No.528)