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検 証 共同事業
共同受注事業のシステムと実際


◆ここ数年の設立の中で、「共同受注」を主目的に組織化するケースが目立ってきた。今回の特集では、この共同受注事業にスポットをあて、そのシステムや課題を考えてみる。 

目的は取引範囲の拡大
昨年度設立された組合の中心事業のトップは「共同受注」。全体の3割を超える組合が、この事業の実施を目指して組合を設立している。
 また過去10年間にさかのぼってデータを見ても、トータルで3割近くが共同受注を目的に組合をつくっている。
 この事業は、これまで組合員単独では受注できなかった仕事を、組合の組織力をもって獲得していこうというものだ。
 つまり「共同受注」とは“組合員の取引範囲の拡大”を目指した事業―――といえる。
 発注者側からすれば、組合の組織力を信頼して取引するわけだから、当然、発注者はその組合と契約を結ぶことになる(つまり契約の主体者は「組合」ということになる)。
 それだけに、組合は発注者の信頼を損なうことのないよう配慮する必要があるし、一方実際に仕事をする組合員も、こうした点を十分認識して、責任をもって組合から割り当てられた仕事を完遂することが求められる。
 このように、組合が受注の契約主体となるものが共同受注の基本であるが、これ以外に組合が発注先と組合員との間を取り持つ「受注斡旋」という形態もある。この場合は、当然に発注者と契約を結ぶ相手方は組合員ということになる。

県内の「共同受注型組合」は、225組合
 ところで、この共同受注に取り組む組合が県内にどれくらいあるのだろうか?
 中央会のデータでは、共同受注を中心に事業を展開している「共同受注型組合」は、225組合。全会員組合の18%にあたる。
 ただし、この数字は、共同受注を明らかに中心事業として実施している組合をカウントしたもので、例えば、共同購入を主体にしていながら、共同受注も二次的に実施している組合や、定款上の項目に共同受注をうたってはいるものの、活発に行われていない組合はこの数字に加えられていない。
 したがって、こうしたものを含めれば、この225という数字より遥かに多くの組合で共同受注が行われている(又は目指してきた)ことが考えられる。
ところで、この225の組合を業種別に分類したのが「表-1」である。
■県内共同受注型組合 業種別分類表 (表−1)

建 設 業 106組合 47%
サービス業 38組合 18%
製 造 業 31組合 14%
小 売 業 20組合 9%
運 輸 業 20組合 9%
異 業 種 9組合 4%
そ の 他 1組合 1%
合   計 225組合 100%

※平成8年度末の中央会会員数が
 1,254組合
 「共同受注型組合」は全会員の18%
 に当たる。

 
この表を見てわかるとおり、「共同受注型組合」の約半数が「建設業」を主体に構成されている組合である。また、全体の14%を占める「製造業者」で組織された組合でも、この9割近くが例えば畳製造やセメント製造など“建設”に関連した製造業者で構成されている。
 さらに、サービス業では、全体の3割が建築士による組合であるなど、共同受注型組合の中でその多くが建設工事に関連した取引の獲得を目指して活動していることが伺える。

事業実施上の留意点
 組合が共同受注事業に取り組むうえで、どのような点に留意する必要があるのだろうか。
 まず、年間の事業計画を立てる時、その年の受注量を予測する必要がある。
 受注量を考えた時、例年の実績からある程度の見込みを立てることはできるが、現実にどれだけの受注が可能か、その能力を見極めることが重要なポイントとなる。
 市場の状況や組合員の季節ごとの仕事量といった外的要件を把握するとともに、組合自身の営業活動や資金調達力の限界といった内的要素をプラスした中で予算を立てる必要がある。
 さらに、継続する受注について、そのすべてを理事会に諮っていては、商機を逃す恐れもある。このため、組合の内部に委員会を設置し、機動性のある組織を構築する必要もあるだろう。
 また規約を整備して、事業の流れやその取引の配分、秘密保持などの原則を明確にしておくことも重要なポイントだ。

 参考までに、いくつかの規約例をあげてみる。

1.共同受注検査規約
 取引先に提供した製品やサービスが、契約通りであるかどうかを組合が検査することがトラブル防止の第一歩となる。また、取引先との信頼を深める意味でもこの検査は重要な役割を果たす。規約では、検査の内容や検査結果に不服があった場合の対応方法等を規定する。

2.共同受注委員会規約
 組合の機動性を高めるために、委員会を設置する場合がある。委員会は、いわゆる理事会の諮問機関として、契約内容の審議や情報の収集をはじめ、理事会から求められた事項を具申する実行部隊である。この規約では、委員会の目的や委員の資格等を規定することになる。

3.共同受注検査規約
 取引先に提供した製品やサービスが、契約通りであるかどうかを組合が検査することがトラブル防止の第一歩となる。また、取引先との信頼を深める意味でもこの検査は重要な役割を果たす。規約では、検査の内容や検査結果に不服があった場合の対応方法等を規定する。
 これ以外にも、組合が受注する取引の内容によっては、別の規約を整備することが必要になる場合もあるだろう。
 いずれにしても、企業の集団組織である組合が、組合員の顧客と直接向い合う事業である以上、その責任体制や取引の履行能力等が一般の企業以上に明確であることが要求されようし、こうしたことが、取引先の信頼を獲得するために不可欠な要素であることはいうまでもない。

入り口段階の「営業活動」が鍵
 しかし、この共同受注事業において最大のネックは、なんといっても取引を実現するまでの“営業活動”である。
 先に紹介した県内の共同受注型組合のように、活発で安定的な事業運営を実現している組合は、ある程度固定化した取引先を持っていることが伺える。
 もちろんそのためには、積極的な営業活動を行うとともに、発注者が満足するものを常に提供していく必要がある。
 そしてこれらを実現するためには、組合事務局に有能な人材を得て、取引先に組合の力量を理解してもらうことが必要であるし、組合員も「仕事を取ることは組合任せ」ということではなく、機会あるごとに組合の存在を知らしめる努力をすることも重要である。
 なぜなら、発注者側からすれば、情報が不足していたのでは、その組合にどれだけの能力があるのか判断することは難しいだろうし、ましてや組合という組織と初めて取引する場合には、一層慎重にもなるだろう。こうした点を補完する意味で、受注に際しての体制整備は重要なポイントになる。

官公需適格組合とは何か
 組合の信用力を補う意味で、官公需適格組合制度は一考に値する。
 「官公需」とは、公の機関との取引をいう。
「官公需についての中小企業者の受注の確保に関する法律」の中で、行政機関が発注するものについて、中小企業者に受注の機会をできるだけ多く与えていくために
■国等が物品の買い入れ、工事の請負等にあたっては、組合を活用するよう配慮すること
■これを裏付ける措置を明らかにするために、国は中小企業者向けの契約目標等を定めた「中小企業者に関する国等の契約の方針」を公表すること
■各省庁の長等が、国等の実績の概要を通産大臣に通知し、通産大臣は各省庁の長等に必要な措置を要請できる
■地方公共団体は、国の施策に準じて中小企業者の受注機会の確保を図るための施策を講じるよう努めることなどを定めている。
 このように、国や地方公共団体が、組合に対して官公需物件を積極的に発注しようとする中で、これを引き受ける組合の側も、発注者が安心して取引できる信用力を作り上げる必要がある。
 官公需適格組合制度は、受注したものを十分責任をもって対応できる経営的基盤が整備されている組合であることを中小企業庁が証明する制度である。
 行政機関が「仕事を任せても信頼できる組合」と、いわば“お墨付き”を与えるわけだから、この証明を取得するには、それなりに条件がある。
 例えば、物品・役務関係の証明基準は、「常勤役職員が2人以上いること」「共同受注委員会が設置されていること」「役員と共同受注した案件を担当した組合員が連帯責任を負うこと」などの7つの基準があり、
工事関係の証明基準はこれに加えて、「共同受注事業を1年以上行っており、ある程度の実績があること」など、さらに3つの基準が付加される。
 厳しい条件ではあるが、こうした基準をクリアし、官公需適格証明を取得した組合は全国に744あり、県内でも46組合が取得して実績をあげている。
 全国的にも、官公需適格組合に対する信頼が高まる中で、昭和60年度には736億円だったものが、平成7年度には、総額1311億円にまで実績を伸ばしている。
 「官公需適格組合証明」は、行政からの受注に際して信用力を補完する手段である。
 しかしそれ以上に、この証明を取得するために必要な、受注に関する委員会や規約といった体制整備が、官公需だけでなく民間との取引でも大きな効果を発揮することは見逃せない。

官公需適格組合証明等、官公需に関するお問い合わせは―
◆中央会振興部団体課まで
●054-254-1511

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 中小企業静岡(1997年10月号 No.527)
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