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競い合う心・助け合う心

 今、私たちが住まいしている現代社会は、どこかが、なにかがおかしい。そう思っているのは、私だけではあるまい。今の社会は、ゆとりや温かみのない、殺伐とした重い閉塞感に覆われている。
 そうした社会現象の根源は、競い合うことを至上とする強い者、力のある者が、必ず勝つことを当然とする合理主義、市場主義にある。
 そのことは経済のみならず政治のあり方にも、偏差値オンリーの教育など、あらゆる分野に広がっている。その傾向は、ひとり日本のみでなく全世界に共通している。
 ところが、そのアンチ・テーゼとして、ダイアナ元妃の突然の死によってもたらされた、異常ともみえる大反応は、その象徴ではないか。イギリスはもとより世界中の人々が寄せたダイアナへの思いは、日本流にいえば、判官びいき(弱い者や薄幸の者に味方する心)そのものであった。
 世界の人々も、強さだけでなく優しさを求めている。今、我々中小企業の多くは、まさに八方ふさがりの閉塞感のただ中にある。どこにその活路を見いだし得るか、呻吟を余儀なくされている。
 そうした中ではあるが、我々は協同組合という「武器」を共有している。言うまでもなく、組合は、共同経済事業を通じて、会員企業を支援することを本旨とするものである。
 しかし、同時にまた利益追求のみの株式会社と異なり、人と人との繋がりを重視する「相互扶助」を基調にした共同体でもある。
 経済では競い合いながら、一方では助け合う心をもった、組合主義の良さが、いまこそ再確認される“秋”である。

      静岡県中小企業団体中央会・会長


 中小企業静岡(1997年10月号 No.527)
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