つい先ごろまで、正確にいえばバブル崩壊の直前までは、世界的にみて「日本の政治家は二流だが経営者は一流」と言われたものである。
大戦後の荒廃のなかから、世界の驚異とまで言われた、経済の高度成長の陣頭指揮者として、経営者の評価は、すこぶる高かった。
とくに日本の都市銀行は、軒並みに世界ランキングの上位を占め、証券会社も空前の業績をあげていた。
しかし今、白日のもとにさらされた事実―――
野村証券にしても、第一勧銀にしても業界のトップ企業としてあるまじき「おそまつ」としか言いようのない、低レベルの不祥事は、いったいどうしたことであろうか。
戸板一枚下は荒海―――つまり、もし自分の企業が倒産すれば、家屋敷ねこそぎ銀行の担保となって取られてしまう中小企業者が、銀行や証券会社のトップであれば、あんなバカなことにはならなかった―――と思うのは、私だけではあるまい。
それにしても、超大企業の組織ぐるみの犯罪を目の当りにすると、残念ながら
人間とは、何と弱いものであるか
人間とは、何とモロイものであるか---を、痛感せざるをえない。
しかし、わたくしども中小企業は、小なりとはいえ、従業員とその家族の生活をも、その双肩に負うている。いまこそ、企業はもとより地域社会の中核としての、自覚と自信をもって、邁進したいものだと、つよく思う今日今頃である。
静岡県中小企業団体中央会・会長
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