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役場の自慢話

戦国のロマン漂う高天神
歴史を散策「大東町」
▲高天神社例大祭の「御渡り行列」

 一五〇〇年代後半。それは、信長、秀吉、家康という戦国の雄が活躍した激動の時代である。
 ここ大東町には、戦国時代、華々しく生きた人々の歴史が刻まれた『高天神城』がある。
 町のほぼ中央に位置するこの城の歴史などについて、同町教育委員会の鬼澤さんにお話を伺った。
 高天神城では、激しい戦が繰り広げられたと聞きます。
 「高天神は、戦国当時、三河・遠江・駿河を結ぶ重要な拠点でした。京にのぼろうとする武田信玄と徳川方の戦いに始まり、武田軍と徳川軍がこの城を巡って三たび激しい攻防を繰り広げています」
 それだけに逸話や史跡も多い…
 「そうですね。特に、二回目の戦いでは、三方を崖に囲まれた城塞をとろうとする武田勝頼と、これを守る徳川方の小笠原長忠軍が激しくぶつかり合いました。
 武田軍の怒涛の攻めに、篭城を決め込んだ徳川勢も力尽きて開城。しかしただ一人降参しなかった大河内源三郎は捕らえられ、城内に今も残る石牢に幽閉されました。この城が再び家康の手に戻るまで、八年もの間、この石牢で過ごしたといわれています。また、篭城した兵士の命をつないだ“かな井戸”跡も当時をしのばせます」
 高天神社例大祭について教えて下さい。
 「昔、高天神城の東峰にあった神社を西峰に移したことから、もとあった東峰の神社に神様が里帰りされる行事です。
▲大河内源三郎が、8年もの間幽閉された「石牢」

 毎年三月最終日曜日に、天狗の面を被った人や、刀・鉄砲を持った五〇余名の地元の人達による行列がおごそかに山道を進みます。
 今年は三月三〇日に開催され、地元の茶園で初摘みされた“高天神城茶”が献茶されたほか、さまざまなイベントも行われました」
 戦国の世にあって、自ら信じる道を突き進んだ猛者達―――。
 今ある高天神城は、こうした激しい時代の余韻を飲み込むかのように、高く立つ木々に囲まれ、静かにたたずんでいる。
 五月晴れの中、歴史書を携えてこの地を訪ね、少し趣の違った散策を楽しんでみるのもまた一興。
 

中小企業静岡(1997年 5月号 No.522)