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・・・経営 経済
 「パートタイマーと有給休暇」
”社員”という認識に立った労務管理を!
(株)大和シンク・エージェンシー
取締役社長 石 橋 達 也



 「エッ? パートタイマーにも年次有給休暇をやらなくてはいけない
のですか?」
 話題がパートタイマーに及んだ時、こんな質間をする経営者が未だ結構いる。
 少しわかっている方でも「それは当然だが、当社は上手くやっているヨ。六カ月雇ってまた契約を更新しているから、有給休暇をやらなくて済んでいる」などと、したり顔でトクトクと解説をする方もいる。
 一般的にいって、パートタイマーに対する認識はこんな程度である。
 ご承知の如く、パートタイマーと
いっても立派な社員(労働者)。
 労働基準法の適用保護を受ける。
 労働基準法第三九条には、六カ月以上継続雇用するパートタイマーにもキチッとした一般社員並みの年次有給休暇を与えなくてはならないことが明記されている。
 これを見て、前に述べたような「六カ月したら契約解除してまた雇い直すことをすれば、有給休暇は不要」という誤解が生ずる。
 人件費の固定化をできるだけ避ける雇用戦略が普遍してきた。
 したがって、従来主流を占めていた試用臨時期間を経て正社員となる、定年までの雇用期間の定めのない採用方法から、雇用期間を定めた「契約社員」とか「パートタイマー」などの雇用方式が増えているのである。
 別のいい方をすれば、パートタイマーなど雇用契約期間を定めた社員に、従来メインとされてきた相当部分までの業務を担当させる傾向が増えているということである。
 それだけに、このパートタイマー雇用管理は、今後ますます重要になってくる。
 労働基準法違反で摘発されたり、後で損害賃金請求をされたりするケースが増える可能性がある。
 パートタイマーは一般社員と異なり働く日数や時間が短い(一般社員と同じ日数や労働時間数のパートタイマーは、パートタイマーとはいわない。立派な一般社員である)。
 その短い分、一般並みの年次有給休暇を与えるのは矛盾しているので法律では「比例付与」といって、一定割合で少ない休暇日数でよいとしている。
 しかし、その「比例付与」が可能な条件は、一週間の契約日数が五・
三日(一週四四時間当時は五・七日)未満か、一週三〇時間(三月三一日までは三五時間)未満である。それ以上の労働時間(日数)契約をしたパートタイマーは一般社員並みに六カ月以上勤続し、その八〇%以上出勤していれば、次の一年間に十日の年次有給休暇を与えなくてはならない。
 四月一日から時短の猶予期間がきれた中小企業のパートタイマーの中には、この「比例付与」の恩恵(?)時間から自動的にオーバーしてしまい、一般社員並みの十日の年次有給休暇を与える必要が生ずるパートタイマーが出てくることが予想される。
 一時間八〇〇円、一日七時間、一週五日の場合、十日といえば五万六千円。これだけの休暇手当の支出となる。
 パートタイマーを腰掛け社員と見ず、基幹社員として働かせる労務管理がますます必要となる。
 またの機会に、六カ月で雇用を一旦切り、再び更新した場合に逃れられるかを述べる。結論はNO。

中小企業静岡(1997年 5月号 No.522)