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富士の叫び

物価高騰の嵐のなか、組合を挙げた危機対策が必要だ

多くの組合がこの5月、6月に通常総会を終え、新たな決意、新たな陣容で新年度への本格的な事業のスタートを切っている。が、その足元で1年前の総会時には予測できなかった規模で変化が我々を襲い、各業界、組合単位では対応が難しい問題に悲鳴を上げている。

物価高騰の嵐である。原油、飼料、農水産物、包装材、鋼材、アスファルト、ガラスと、産業界や国民生活全般におよび、深刻なダメージを与えている。5月の国内企業物価は27年ぶりの高い上昇率で、今後の見通しにも不安が増している。

こうした事態は政府も予測していなかったのではないか。昨年末に閣議が了解した『平成20年度の経済見通しと経済財政運営の基本的態度』を改めて見てみると「20年度は世界経済の回復が進み、日本も物価の安定のもと民需中心に景気回復が続く」との見通しを立て、経済財政の運営をもくろんでいた。その前提のひとつとなる原油輸入価格の予測は1バレル83ドルだったが、見通し発表後数ヵ月で今我々が直面しているとんでもない数字になってしまった。基本が狂ったのであるから、直ちにさまざまな政策を見直し、矢継ぎ早に対策を打ち出すかと思いきや、党利党略に時間を浪費してはいないか。今こそ政治の出番である。

我が国の政治家がよく引き合いに出す「民信不立(たみ信なくば立たず)」という、紀元前・春秋時代の孔子の言葉が重みを増している。孔子は政治の要諦を「食料を充分にし、軍備を充分にし、人民の信頼を得る」の三つだと答えた。「やむを得ずに捨てるなら、どれを先にするか」と問われると、「軍備をやめる」と言い、「さらにやむを得ない場合は」、「食料を捨てる。人民に信頼を得られなければ政治は成り立たず、国家は滅びるしかないからだ」と。現在の日本国民の信はどうだろう。

加速するインフレ、格差拡大が懸念される。せめて我々は組合をあげて今できる共同事業は何か、危機対応のシナリオを作るべきだろう。本会もこの意識を共有して事業にあたる所存である。

静岡県中小企業団体中央会・会長井上 光一