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特集

急がれる中小企業のBCP(災害時の事業継続計画)づくり

7月に発生した新潟県中越沖地震で被災した自動車部品メーカーが操業中止に追い込まれ、自動車産業全体の動きが止まるという異例の事態に陥ったことは記憶に新しい。災害で被害を受けた中小企業の事業中断は、そのまま廃業や倒産につながりかねず、それが長期にわたれば、被災地の地域経済はもとより、日本経済全体に深刻な影響を及ぼしかねない。特に静岡県は、いつ発生しても不思議ではないといわれる東海地震がその全域を襲うことが予想される。

特集では、災害など緊急事態に遭遇した際、自社が生き抜くための計画であるBCP(事業継続計画)策定のポイントなどその概要を解説するとともに、積極的にBCPに取組む県内の事例も紹介する。一刻も早いBCP策定にお役立て頂きたい。

資料提供:中小企業庁・静岡県

事業継続計画(BCP)とは

大規模な地震などの災害発生時、被災した企業が、従業員と連絡を取り合う手段や代替生産先の確保、さらには復旧資金の調達手段確保などの対応を迅速にとることは極めて難しい。さらに、こうした緊急時には、平常時とは異なる多くの判断が経営者に求められる。

とくに経営基盤の脆弱な中小企業では、災害時におけるひとつの判断ミスにより、場合によって事業の縮小や廃業に追い込まれる可能性も高い。

そのため、平常時から「被災時に事業をいかに早く復旧させるのか」「そのためには何を準備し、取り決めをしておくのか」などの対策や手段を講じ、中核事業の早期復旧計画を検討しておくことは、事業体存続のためには不可欠である。

従来の防災計画は、災害時における人命と財産を守ることに力点が置かれていた。これに対し事業継続計画(BCP =Business Continuity Plan )では、人命と財産を確保した上で、災害後に中核となる事業を継続または早期復旧させることで、顧客の信用や従業員の雇用を維持し、企業を存続させることが目的だ。

したがって従来から各企業が取り組んでいる防災活動と大きく異なるものではない。

BCPとは、今までの防災活動の延長であることを、まずは認識することが必要だ。

中小企業BCPの要点

BCPは、大企業から中小、家族経営に至るまで企業の規模を問わず、策定・運用する必要があるが、特に中小企業のBCP では、次の四点が重視される。

企業同士で助け合う

組合などの組織を通じ、経済事業や情報交換など活発に事業を展開している中小企業は多い。緊急時に、これら組合や取引企業、被害の少ない企業などが被災企業を援助することは、最終的には自社の事業継続にもつながる。

企業単独でなく、組合や商店街など組織での策定・運用への取組みや勉強会などの開催も効果的だ。

緊急時でも商取引上のモラルを守る

協力会社への発注を維持する、取引業者への支払いを滞らせない、便乗値上げなどしない、こうした取引上のモラルが守れなければ、企業の信用は失墜し、工場や店舗が稼動し始めても事業の復旧は望めない。

協力会社が被災した場合、事業継続のため一時的に他社に代替取引を依頼することも想定される。被災した協力会社が復旧した後、被災前の商取引の状況に戻すことも企業モラルの観点から望まれる。

地域を大切にする

多くの中小企業は、その地域に顧客を抱え、また経営者や従業員自らそこに居住するなど、地域の一員として企業活動を行っている。

企業の事業継続とともに、企業の力を活かした被災者の救出や商品の提供等の地域貢献活動にも積極的に取組みたい。

公的支援制度を活用する

国や地方自治体では、中小企業向けに公的金融機関による緊急時融資制度や特別相談窓口の開設など各種支援制度を用意している。これらを有効に活用することにより、事業継続や早期の事業復旧が可能となる。(震災対策向け公的支援制度の例 参照


「防災」とBCP